■アメリカに改造される日本。
【日本社会を読み解くための本】
「拒否できない日本――アメリカの日本改造が進んでいる」
関岡英之
14年間の銀行勤務を経て、「第二の人生を模索するべく」大学院建築学科に籍を置き、修了直後に第7回蓮如賞受賞したという異色の経歴を持つ著者が、独自の調査にもとづいて明らかにする「アメリカの日本改造」。
●アメリカに都合のいい社会に変えられて来た
「建築基準法の改正や半世紀ぶりの商法大改正、公正取引委員会の規制強化、弁護士業の自由化やさまざまな司法改革……。これらはすべてアメリカ政府が彼らの国益のために日本政府に要求して実現させたもので、アメリカの公文書には実に率直にそう明記されている。近年の日米関係のこの不可解なメカニズムのルーツを探り、様々な分野で日本がアメリカに都合のいい社会に変えられて来た経緯を、アメリカの公文書に即して明快平易に描く」(新書カバー見返しより)
●すべてアメリカの公式文書
「だが本書で私が指摘したことは、ほかでもないアメリカ政府自身が『年次改革要望書』や『外国貿易障壁報告書』などの公式文書で公表していることなのだ。これは陰謀でも何もなく、アメリカ政府によっておおやけの対日政策として決定され、毎年定例的に議会へ文書で報告されてきたことなのだ。〈本文より〉」(新書版の帯より)
●ショックと怒り
「日米構造協議」という名の、アメリカによる「日本改造」のやり口はレーガン時代に生み出されたという(第2章「対日圧力の不可解なメカニズム」)。その後、手法は高度化してきており、02年の商法改正や公正取引委員会の規制強化などにまで「改造」の手は及んでいると知ると、「そういうことだったのか」とショックを受けずにいられない(第3章「この世はアングロ・サクソンの楽園」)。
著者の怒りは、第5章「キョーソーという名の民族宗教」に至って爆発するが、この本を読み進めてくれば多くの日本人が共感を覚えるだろう。しかし著者はあくまで冷静に、「すべてアメリカ政府が公文書で発表していること」と締めくくっている。
●虚構と化した「民主主義国家」
この本のメインメッセージとは少し異なる視点になるが、アメリカによる「日本改造」が水面下でここまで進んでいると知ると、「民主主義国家」とは何なんだろうかと頭を抱えてしまう。ノスタルジックな幻想を捨ててしまえば、日本の民主主義制度はすでに虚構と化したと言い切った方がいいだろう。
しかもこの虚構は「建前」のようなものでタチが悪い。制度上の手続きはかろうじて民主主義制度であっても、実態は別のメカニズムで決まっていく。アメリカによる「日本改造」はその代表例だが、おそらくほかにも大事なことが非民主主義的なメカニズムによって決まっていく。形骸化し、都合よく利用される道具に堕した民主主義制度を復活させるための処方箋を私たちは見つけられるだろうか?
■書名: 拒否できない日本――アメリカの日本改造が進んでいる
著者: 関岡英之(せきおか ひでゆき)
発行: 2004年4月20日(初版第1刷発行)
出版社: 文芸春秋(文春文庫)
定価: 700円+税(計735円)
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url(アマゾン)(2004/10/3現在、在庫切れ)
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