「子どもが減って何が悪いか!」
赤川学、2004/12、ちくま新書
「今どきなかなか挑戦的なタイトルの本じゃないか」、と書店で手にとったら学生時代の同級生が著者だった。もう10年以上も会っていないが、知人の活躍をこうして目にするのはうれしいことだ。それに自分もがんばらないと、という励みにもなる。
少子化対策は間違っている
この本の最大の主張は、「男女共同参画社会」が少子化対策にならない、という驚くべきものだ。個人的にも、働く女性、とくにフルタイムで働く女性が、職を続けながら出産・育児をしやすくすることは、女性の生き方にとっていいことだと考えてきた。本書もその点を否定しているわけではない。ふつうはそれが少子化対策にもつながると思うし、私もそう思い込んできた。
現に、本書によれば、政府や一部の学者はそういう主張をし、マスコミもそういう報道をしている。しかし、それらは科学的根拠に欠くものである、という反論が順を追ってしっかり展開されていく。マスコミ等を通じて形成された認識、あるいはもう少しリアルな認識――私自身には子供はいないが身近で見聞きする経験から得たもの――が覆されていくのだ。なるほど、学者の仕事とはそういうものでなくてはならない。
リサーチ・リテラシー
このことを著者は「リサーチ・リテラシー」として次のように説明している。
リサーチ・リテラシーは、国や報道機関が公表したことならすべて事実に違いないと信じる「素朴な人」の段階をこえて、公表されているデータに対して疑いの目を向ける、つまりツッコミを入れられる人になること、そして最終的には、相対的に妥当な統計とそうでないものを区別できる「批判的な人」になることを目指している。(同書序章、p.14より)
政府とマスコミは信じられるか?
こういうまともな主張に触れると、ますます政府・マスコミに対する不信感が募る。イラク戦争が始まるとき、戦争に向かって進んでいくときは、こんな感じで「戦争やむなし」みたいな空気が作られていくんだ、という感覚を抱いた。しかし、少子化対策にまで政府やマスコミに作られたイメージが広がっているとは・・・。素人としては、リサーチ・リテラシーとまでいかなくても、メディア・リテラシーで自衛しなくてはならない。■
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