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2005年6月

2005年6月18日 (土)

書評: 「巨大企業が民主主義を滅ぼす」

原題は"Silent Takeover"(無言の乗っ取り)。タイトルだけでなく、静かに進行する社会の変化に対する警鐘の書という意味でも、カーソンの「沈黙の春」(Silent Spring)を思い起こさせる。
「巨大企業が民主主義を滅ぼす」 書誌データ(このブログ内)。
※「沈黙の春」文庫版新装版(四六版変型) いずれも新潮社のサイト。

今では古典となったカーソンの著書は、農薬や殺虫剤などに持ちいらる化学薬品が、生態系の破壊をもたらすことを世の中に訴える先駆けとなった。一方、ハーツによる本書は、巨大な多国籍企業が、民主主義国家の政府に取って代わる存在になりつつある現実を、豊富な事例で描いている。

■企業が国家にとって代わる

「世界の国家と企業の経済規模の上位一〇〇社をみると、企業は五一社入っており、国家は四九ヵ国にすぎない。」(p.14, 企業の売上高とGDPを比較)というのだから、「乗っ取り」でなくても、経済的な権力の面で企業が国家に取って代わるほど大きな存在になっていることがわかる。

その「乗っ取り」について描く前半部では、巨大企業(の一部)が金の力で、政府や国際機関の政策に影響を与えている様子に、暗澹たる気分にならざるを得ない。

■企業による統治

一方後半部は、消費者が購買行動を通じて企業に影響力を行使したり、インターネットや直接抗議行動を通じて企業や政府の政策に影響を及ぼしたり、という事例が挙げられ、光明を感じることができる。

また、ジョージ・ソロス氏やテッド・ターナー氏のような成功した実業家が、莫大な金額を慈善活動や国連に寄付するなどのかたちで、従来の政府の役割を補っている面にも目が向けられている。

さらに、突き詰めれば利益追求のためのマーケティング手法であっても、CSR(企業の社会的責任)が重視されることで、企業活動が倫理的になる面も指摘されている。

■人々のための民主主義の再建

こうした企業による統治に対抗するルート、実業家や企業活動自体に期待できる部分を挙げながらも、著者はまったく楽観はせず、最後に「人々のための民主主義を再建」する方針を打ち出している。

具体的には、あまり詳しい記述はないものの、次の6つの方策が提起される。
1)国家のレベルで、企業の特権を剥奪する、
2)トリクルダウン理論へのこだわりを捨てる(レーガノミクス、サッチャリズムの否定)、
3)国家レベルでの企業の力を抑止する(独禁法強化など)、
4)グローバルなレベルでの政治を組みなおす(海外の子会社の事業活動に対する責任を親会社に義務づける、世界社会機関のような機関を設立するなど)、
5)最も排除され周縁においやられている人たちの問題を解決する
6)グローバルな税金管理機関を設立する

■企業による統治に対する民主主義

しかし私の見方は少し違う。著者の挙げる方針は確かにもっともなもので、「人々のための民主主義を再建」すること自体には、もちろん全面的に賛成する。

しかし、新たな権力者である企業に対して、政府や国際機関が規制をかけ、問題解決を図る、という方法で、果たして十分なのだろうか。従来の民主主義制度による政府の統制が、それほどうまくいっていないことを考えると、このやり方は楽観的すぎる。

むしろ、新たな権力者である企業を民主的に統制する方法を、もっと幅広く検討すべきだと思う。市場主義経済では企業は利益追求を第一にする、という前提で本書は書かれているが、必ずしもそういう見方がすべてではない。

現状では制度面でも未発達の部分が多いが、企業自体の統治(ガバナンス)を、より民主的なものに近づけることが可能なはずだ。それによって企業による社会の統治を、より民主的なものにすることができるのではないか。その方が楽観的すぎるとの批判は覚悟しているが、本書に対するコメントの域を出るので、別の機会に改めて考えを述べたい。■

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■吉野家へ行こう!

うかつにも涙した。そして本日の夕食は吉野家。

牛焼肉丼(並)+ 半熟卵 + けんちん汁 (計600円)

最後は判断ですから、「何が正しい、何が正しくない」かは、時間が経過してからでないと分かりません。今は私がトップとして確信を持って方針を株主や社員に説明し、合意形成できれば、それを実行に移す。もし同意が得られなければ、私が辞めればいい。明々白々で経営しようと思っています。
(「日経ビジネス」2005年6月20日号 編集長インタビュー 安部修仁氏(吉野家ディー・アンド・シー社長)より。以下の引用も同じ。)

ご承知のように、「松屋」や「すき家」が他国産の牛肉で牛丼を復活させたのに対し、「吉野家」は米国産にこだわって、販売を休止したままである。そのせいで、売上も他社に比べて低迷が続いているらしい。

以前から細々と牛丼店通い(「牛丼店支援キャンペーン」を参照)を続けているが、「松屋」「すき家」に比べ、「吉野家」の店にはかつての賑わいが欠けているようだ。

実際、牛丼を注文するわけではなくとも、メニューバラエティが豊富な「松屋」「すき家」に比べると、基本4つしかない「吉野家」には魅力不足を感じざるをえない。

それでも、この人はぶれない。

牛丼の販売休止から、約半年での単月黒字転換。私は社員を尊敬しましたし、誇りに思います。

私は、牛丼がなくなってからずっと「今から起こる出来事1つずつを、自らの細胞に植えつけろ」と言い続けています。

倒産を経験した組織のリーダーにこそ言える、苦境に対する姿勢。この人が率いる会社を応援したい、と素直に思った。■

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2005年6月13日 (月)

■携帯で投票

政治の話ではない。株主総会の議決権行使に、携帯電話で
専用サイトにアクセスする方法を導入するというものだ。

6月10日付の日経新聞(朝刊)は、1面トップで
「携帯で投票」120社
という見出しで報じている。記事によれば、個人株主を
重視する動きだという。
ちなみに、携帯にかぎらずインターネットで投票できる
企業は約3百社に増える見込みとのこと。

個人株主が株主総会で議決権行使をしやすくなるのは、
公開企業のガバナンスの民主化という観点から、好ましい
ことだ。いっそうの拡大を期待したい。■

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