先日受講したセミナーで「学習0,1,2」という理論があることを初めて耳にした。※1,2
「学習0」は、受身で講演を聞くだけ、あるいは本を読むだけというもので、ほとんど学習効果がないという。 「学習1」は、「ある文脈のもとでとるべき行動(芸・正解)を学ぶ」もので、イルカに芸を仕込むのが例として挙げられた。知識やスキルを習得するタイプのものはこれにあたる。
したがって反復学習により効果が得られる。
これに対して「学習2」は「文脈の学習」で、イルカの例で言うと次にやる芸をイルカ自身が選ぶように教えるのにあたるという。
つまり「学習2」は
「変化に対応することの学習」
「どういう文脈の時にどういう学習をすればよいかということの学習」
であり、ほかにも
「文脈を変えても適用できる」
「現場と原理原則の結びつきを学ぶ」
「正解はなくてもよい」
「学習1を抜きに教えてもだめ(無秩序になる)」
「リーダー教育に役立つ」
「自発性・自律性を与えることにより、モチベーションを高める」
という説明がされた。 また「学習2」に効果的な学習方法として、
ケーススタディや参与観察などで<教材の文脈を変える>
討論、ロールプレイなどで<学習活動の文脈を変える>
内省、振り返り、日誌などで<自我関与の文脈を変える>
という3パターンが挙げられている。
ビジネスゲーム形式の研修は、まさに「学習2」が中心だ。
知識・スキル系の研修と違って「明日から使えることを」という要望には十分に応えにくいタイプのものだが、「学習0,1,2」という枠組みで説明すれば価値をよく分かっていただけるのではないか。
同時に、研修を実施する側としては「学習2」という側面を意識して、効果を高める工夫をしていかなくてはならない。
※1: セミナー講師は、早稲田大学人間科学部助教授の向後千春氏。
2005年7月21日 e-Learning Conference 2005 Summer Track-D-1
「学習の条件 ~どんなときに人は学ぶか~」において。
※2: この理論のオリジナルは心理学者のベイトソン(G.Bateson)で、学習4まであるらしいが、向後氏によれば科学的と言えるのは学習3(学習2の学習、人類全体の学習)がぎりぎりだという。
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