Google のA株・B株と企業統治
先ごろ株式公開した米検索最大手 Google 社にはA株とB株があるという。
1株の議決権 A株 1票 B株 10票
発行株数 A株1億9100万株 B株1億0200万株
しかも、発行済みB株の約79%は、共同創業者のラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏の2人とエリック・シュミット最高経営責任者(CEO)が保有している(7月末時点)という。
[出所: 日経ネット IT+PLUSの記事 ]
CNET JAPANの記事にあるように、IPO(新規株式公開)の参加者である一般の投資家の議決権が少ないことに、コーポレート・ガバナンスの観点から批判がある。しかし、それでも Google は高値を付けたのだから、投資家は十分にいたことになる。
議決権の異なる二種類の株を発行するやり方は、たぶん「種類株」の一つだろうが、これだけアンバランスな議決権は、最近日本で導入された有限責任事業組合(LLP)や来年4月から導入される合同会社(LLC)を連想させる。
会社の議決権の配分を出資した金額に比例させない(させなくてよい)、という点が共通しているのだ。 Google のA株・B株は、株式会社が株式公開する段階でそれを実現した先駆的なケースと言えるだろう。
今後、このような出資額と議決権がアンバランスなケースが増えるのは間違いない。なぜなら、岩井克人氏の言うように、おカネの価値がヒトの価値に比べて低下しているからだ。ビジネスにおける最も重要な資源はすでに、カネやカネで買えるモノではなく、ヒトに移っている。人的資本の時代なのだ。
もう一歩先に進めて考えると、公開企業(パブリック・カンパニー)の会社統治(コーポレート・ガバナンス)が、資本力の大きな少数者に握られた状態から、多数の人々(経営者、従業員、大きな資本を持たない一般市民)の手に広がる可能性が見える。そうなれば経済社会の統治のあり方は、現在とはまったく違う様相を示すだろう。■
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