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2005年9月 3日 (土)

郵政民営化も選挙も目隠し装置にさせてはならない

先週日曜日の日経新聞「内外時評」は秀逸だった。

「目隠し装置を取り除け――財政再建に遠い改革の中身」と題した論説委員の吉野源太郎氏のコラムである。ヤマト運輸元社長の小倉昌男氏の言葉を切り口に、8月に参院で否決された郵政法案がすでに骨抜きにされており、仮に通ったところで、国の莫大な借金の問題を先送りする「目隠し装置」にすぎないことを指摘する。

政治・財政の観点からみた郵政民営化の本来の狙いは、郵貯のお金が回る財政投融資(財投)へのカネの流れを止めることである。では否決された法案はどうだったか?

それでも多くの識者がまゆをひそめながら法案を支持してきたのは、貯金・保険部門をいったんは独立させる計画になっているからだ。しかし、それも売却した貯金、保険会社株の買い戻しにより空洞化して、国の実質支配が続く恐れは強い。

日本の財政は既に危機的な状態にある。三月末で七百八十兆円を超えた国の借金は、金利返済だけで雪だるまのように増え続ける。

「七百八十兆円」は政治が国民に許した飽食のツケである。政治は国民に節度を説く代わりに、国民の目から経済の実態を隠して、欲望が無限に実現するかのように錯覚させた。「目隠し装置」として特に威力を発揮したのが財政投融資と年金制度、そして銀行行政だった。(中略)倒産から身を守ってくれる間接金融。老後を“保証”する年金。とりわけ郵貯を入り口とする財投は「第二の予算」となり財政規律をゆがめてきた。

貯金銀行を国債発行の新しい“隠れ受け皿”にしかねない「民営化法案」を小泉首相は踏み絵に使い、刺客騒動を演出する。選挙自体が「目隠し装置」になったように見える。

日経新聞には、こういう鋭い洞察の論説を、日曜日の28面ではなくて平日の社説欄で堂々と掲載してもらいたいものだ。■

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