ライブドア事件と「ポスト税金」時代のデモクラシー
ライブドア社事件から窺われるのは、金融・市場経済をステージにして権力者が人々から巧妙にお金を巻き上げる「ポスト税金」のしくみである。デモクラシーの観点から「ポスト税金」対策を講じなくてはならない。
新聞、雑誌の報道などの断片的な情報から推測、憶測するに、ライブドア社の錬金術にはアンダーグラウンドのお金が絡んでおり、政治家も関わっていたと見られる。また他の一部の上場企業でも同様の錬金術が行われていたと考えられる。この推測、憶測にもとづくなら、資本市場(株式市場)は、現代の権力者が人々(投資家)から巧妙にお金を巻き上げるステージとして利用されていると言える。
かつて権力者は「政府」として「税金」を人々から巻き上げた。もちろん現代では大部分が世の中のためになることに使われるのだが、一部を権力者が裁量的に使ってきたことは誰もが認めるであろう。現代の議会制民主主義制度は国王の課税権に対する統制から始まったとされるが、制度の発達で「税金」に対する監視、統制は徐々に厳しくなってきた。
そこで「政府」の権力者は「税金」以外の「年金保険料」や「国債発行」という形でお金を巻き上げる手段をシフトさせてきた。監視、統制の厳しい「表」から周辺や裏へ回るのである。とはいえ、まだこのあたりは「税金」の応用に過ぎないとも言える。
現代の「政府」の権力者が人々からお金を巻き上げる「ポスト税金」のしくみは、例えば「金利操作(インフレ誘導を含む)」や「民営化」である。これらの特徴は政治行政分野を権力基盤としつつも、お金を巻き上げるステージとして金融・市場経済分野を用いている点である。
ライブドア社を利用して資本市場からお金を巻き上げた権力者には「政府」とそれ以外の権力者がいるだろう。どちらが主役かもわからない。しかし、そこから窺われるのは「ポスト税金」の巻上げのしくみの巧妙さと広がりである。もはや「税金」は権力者が人々からお金を巻き上げるメインのしくみではなくなっているのかもしれない。
「ポスト税金」時代のデモクラシーには、金融・市場経済を利用した巻き上げのしくみを捉え、そこでの権力者は誰なのか、どうつながっているのかを捉え、それらを人々が監視、統制するしくみを築いていくことが求められる。それはこれまでの議会制民主主義制度とまったく様相を異にするデモクラシーになりうる。そのことを私たちは「想定」しておくべきであろう。
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