ゲーリー・ハメル「経営の未来」
マネジメントに関わる方には、ぜひとも読んで欲しい1冊。
「コア・コンピタンス経営」で知られるマネジメントのグルの一人、ゲーリー・ハメル氏がやってくれた。まだ冒頭を読み始めたばかりだが、「経営管理」のパラダイム転換期の到来を告げるハメル氏の高揚感が伝わってくる。
20世紀型に発達した階層型組織に象徴される「経営管理」が、今、転換期を迎えている。迎えるのは、本の帯によれば「ボトム主義経営」(この表現は少なくとも目次には出ていない)。より一般的には「マネジメントのデモクラシー」と呼ばれるものだ。
3年ほど前から企業組織のマネジメントのデモクラシーに関心を持ち始め、自分なりに研究をしてきた。調べてみると英語の書籍では、従来型のマネジメントが終わるという趣旨の本がいくつも見つかった。
理論だけでなく実例にも事欠くことはなく、ブラジルのセムコ社、米国のW.L.ゴア社(いずれも本書に登場)、AES社、パタゴニア社などがよく知られている。
日本では「デモクラシー」あるいは「民主主義」という言葉は政治分野のことを指すイメージが強いため、企業組織にあてはめることに違和感がある。むしろ、会社の中で「民主的」と言うのはたいがい左翼・労働組合系の人たちなので、ふつうの使い方がしにくい。
しかし、なんと呼ぶかは別として、いよいよ「経営管理」がイノベーションを迎える時期が来たことがはっきりした。ハメル氏の主張を読んで気づかされたのは、「一つの新しい経営手法」ではなく、「パラダイム転換」を伴う変革だという点だ。
パラダイム転換は、20世紀型のマネジメントにどっぷりとつかった人ほど、そうした組織の中で権限を持つ人ほど、受け入れるのが難しい。したがって、本書の読後感は一種の「踏み絵」になるだろう。
ガソリンエンジンの車で走り続けるのか、モーター駆動の電気自動車に乗り換えるのかに喩えられるだろう。間にハイブリッドという選択があることは否定しない。しかし、それは移行期の形にすぎないのだ。
ゲーリー・ハメル、ビル・ブリーン 「経営の未来 ――マネジメントをイノベーションせよ」 日本経済新聞社、2008/02(クリックするとアマゾンのサイトへ)
| 固定リンク
「j 本の紹介・お勧め本」カテゴリの記事
- 「フリー 〈無料〉からお金を生み出す新戦略」(2010.03.02)
- 「対話流」(2009.07.22)
- 「『チーム脳』のつくり方」(2009.05.26)
- 「コピー用紙の裏は使うな!」(2009.05.26)
- 「日本でいちばん大切にしたい会社」(2009.05.05)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント