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2009年2月23日 (月)

国際会計基準の「導入」

会計のルールは国際的に統一されていません。これを共通化して比較しやすくしようという動きが、もう何年も前から進んでおり、国内の会計ルールは毎年のように変更されてきました。ところが、昨年あたりから「共通化」の完了前に「導入」という話に転換したのです。

「共通化」と「導入」はどう違うのか?
「導入」されると何が変わるのか?

1)世界の会計基準は3つ

すでにEUで採用されている「国際基準」のほかに「米国基準」「日本基準」の3つがあるとされます。もちろん基本は同じですが、細かい部分で違いがあります。よく取り上げられるのは買収・合併時の会計処理の違いです。

ちなみに、現在の日本の上場企業でも「米国基準」で開示しているところもあります(認められている)。BS,PLの様式に細かい違いがあるので、初心者ほど混乱してしまいます。

2)共通化とは?

3つの会計基準で異なるルールを、段階的に揃えていく動きが進展していました。しかし、それぞれの考え方があるので、完全に統一するには至っていないのが現状です。専門用語では「コンバージェンス(収斂)」と呼ばれます。

3)導入とは?

3つの基準を揃える前に、日本も米国もそれぞれ「国際基準」を使い始める、ということです。今、出されている案は、2,3年の「任意適用」(選択制)の期間を経て、「強制適用」(義務付け)する、というものです。もっとも、対象となるのは「連結会計基準」のみなので、上場企業などに限られます。

4)いつから?

日本では、「任意適用」は早ければ2010年3月期(=今年の4月に始まる年度!)からとされ、「強制適用」は2015−16年を目指しているとされます。

5)どんな違いが?

目立った違いは、国際会計基準には「経常利益」の項目がないこと、当期純利益のあとに保有有価証券の評価損益を加えた「包括利益」の項目があることなどです。そのほかも、背景にある考え方が異なるので、先に挙げた買収時の処理や、リース取引や減損処理の扱いが変わるなど、決算数値へのさまざまな影響があるとされています。

6)期待すること

ここ数年間は、適用する基準の違いによる他社との比較の難しさ、基準の変更による自社の過去との比較の難しさの問題が発生します。少なくとも自社の財務諸表については、最低でも前期に遡って同じ基準での開示をしていただきたいと思います。

ちなみに会社法の改正で「純資産の部」が設けられたときは、前期と様式が違っていて非常にわかりにくい開示でした。

参考:
・日経新聞2009/1/29付 「国際会計基準 義務化、早ければ15年 示唆」
・金融庁企業会計審議会 公表資料「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)(案)」(PDF:128K)http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/kikaku/20090128/01.pdf
・日経新聞2009/1/7,8,9付 「国際会計基準がやってくる」

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