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2009年3月

2009年3月31日 (火)

パスタの1分前、カレーのルー2種類

パスタをアルデンテに茹でるには、袋に書いてある「ゆで時間」より1分ぐらい前にお湯から上げる、というコツが広まっています。そのあと加熱しながらソースを和える時間を含めて「ゆで時間」になるようにするとよいらしいです。私も何度か試していますが、確かにその方がおいしく出来上がります。そして、ふと思うのです。

パスタメーカーの開発者はくやしいだろうな、と。

勝手な想像に過ぎませんが、表示の「ゆで時間」を修正するコツが広まるのはとてもくやしいことでしょう。そのほうが美味しかったらなおさらです。

まさかパスタメーカーの人が、消費者が茹で上げたパスタをそのまま食べると思っているはずがありません。ソースを和える時間があることがわかってはいても、表示を変えることが難しいのかもしれません。あるいは消費者の好みがアルデンテに変化したせいなのかもしれません。

いずれにせよメーカーの人としては、なんとかしなくてはならない問題だと思います。

同じような話においしいカレーを作るには2種類のルーを使う、というコツがあります。私が開発者なら、かなり悔しい。だってルーは、スパイスを調合したものであって、美味しくなるような組み合わせを研究し尽くしているはずなのに!

こちらは何が起こっているのでしょうか?

ある人に聞くと、ルーを2種類使うだけでなく、隠し味にフルーツなども使うと言います。それが「わが家の味」らしいのです。

それを聞いて、なるほど、わかりました。消費者のカレーに対する味覚・調理技術は、ルーの先を行く進化を遂げていたのです。肉や野菜の素材、カレールー、隠し味を組み合わせるコーディネート品に発展しているのです。従来ルーは、味を規定する強い支配力を持ったコアパーツだったのですが、支配力が低下し、お気に入りの味を生み出すためのパーツの一つになってしまったのです。

と考えると、メーカーの戦略にもいくつか選択肢が出てきそうですね。近いうちにそういう製品が登場するを楽しみにしていましょう。

両方の事例とも《消費者の成熟化》という言葉で括ることができそうですし、後者は《ユーザーイノベーション》の領域に入るかも知れません。

さて、わが身を振り返ってみましょう。(読者のあなたもどうぞ)

・自分の作っている製品、売っている商品がお客様にどんな使われ方をしているか、実態をつかめているだろうか?

・お客様が使いこなすために工夫することを想定して、利用しやすい形態や関連情報を提供しているだろうか?

私の場合はいろいろと反省させられます。パスタとカレールーに学んで、今後の開発に活かしたいと思います。

※2009/04/01 一部加筆。

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2009年3月30日 (月)

イノベーション力 ベスト30社

日経ビジネスは、読まずに積まれていくことが多いのですが、今週号(先週末配本)は「イノベーション力 ベスト30社」を特集していて面白そうです。(※1)

1位 森精機製作所
2位 日本たばこ産業
3位 コマツ

という具合に、やや意外(? 失礼)な社名が上位に並んでいます。興味のある方は、ぜひご一読ください。

「イノベーション」というと「技術革新」と訳されることもありますが、必ずしも「テクノロジー」分野にかぎりません。
選考方法はやや複雑で、2段階方式になっています。

・対象: 全上場企業 約4000社

・一次選抜: 過去8期分の決算データについて、収益性、効率性、成長性、積極性、柔軟性の5項目14種類の指標で配点し、上位約15%(573社)を選抜

・二次調査: 新製品・サービスの投入、業務効率や品質の向上、新しい顧客の開拓、取引先との関係強化、組織運営と多様な人材の活用、という5項目についてのアンケート調査にもとづいて得点化

・総合ランキング: 一次選抜の結果を50点満点、二次調査の結果を100点満点として、総合スコアを算出

ということらしいです。

例えば、一次選抜の「柔軟性」には、「浮動株比率」(高い企業、上昇している企業を高く評価)や「従業員平均年齢」(低い企業、低下している企業を高く評価)などが含まれています。

また、二次選考の「組織運営と多様な人材の活用」には、「教育投資の動向」、「ダイバーシティー(多様性)の推進体制」などが含まれています。

※1:日経ビジネス2009年3月30日号 pp.80-106、ほか

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2009年3月29日 (日)

さくら満開間近

090329_121826_先週寒かったせいで、さくらの開花はあまり進みませんでしたね。

でも、いよいよという感じがします。次の週末は、お花見に適した天気になるといいですね。

写真は自宅の近所で毎年早めに咲くさくら
(下から見上げたところ。背景の緑はヒマラヤ杉?)

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2009年3月26日 (木)

はかまの季節に

通勤で武道館のある九段下駅を使うのですが、ここ数日、はかま姿の女性をよく見掛けます。――卒業式の季節。

ふと「今年の就職は結局どうだったんだろう? 来年の方が厳しくなるのだろうか?」と思いました。

ご存じのように、新卒での就職は年によって波の高さがえらい違います。私などはバブルがはじける直前だったので苦労を知りません。それに比べれば2000年前後の就職氷河期は、多くの(不本意な)フリーターを産んでしまったと言われますから、当事者には割り切れないものがあるでしょう。

しかし、この違いは一般には、解消すべき「不公平・不平等」とは捉えられていないようです。景気のサイクル自体がコントロールできないのだから、しかたがないと考えられているからかもしれません。

となると、そうした違いを受け入れた上で、就職時の苦労をあとの人生に活かしてプラスにしていくことが大切でしょう。

・最初の就職で楽をするのが良いのか?
・自分の幸せは他人との比較で判断すべきか?

この春学校を卒業して就職を迎える方に、良き人生が待っていることを願って!

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2009年3月25日 (水)

WBC日韓決勝

昨日は、中継や夜のニュースで盛り上がった方も多いのではないでしょうか?

参加各国にはさまざまな事情があるにせよ、世界のトップが東アジアの隣国どうしというのはすごいことです。お互いにライバル心を燃やしているようですが、結局、5戦やって日本の2勝3敗とほぼイーブンなわけですから、どっちが優勝しても不思議ではなかったと言えます。

これを機に、トップを争う良きライバルとして、日韓の親善が深まることを願います。

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2009年3月24日 (火)

オープンな組織とは?

弊社の経営理念は「働くことの意義を高める」というものですが、これとは別にキャッチフレーズ的に掲げているのが、「オープンな組織&エンパワーされた社員」です。今日はそのお話を。

「オープンな組織」は「働くことの意義を高める」ためのキーになる条件の一つだと考えています。定義しようとは思っていませんが、
・組織が内部に対して開かれている面と、
外部に対して開かれている面
の両方があると思います。

内部の面では、例えば、業績情報を従業員に開示して参加(意識)を高める
「オープンブック」というマネジメント手法があるのですが、これは一つのオープンな組織の一つのあり方と言えるでしょう。(※1)

実際の「オープンブック・マネジメント」は企業によって様々な形態をとりますが、有名なところでは京セラのアメーバ経営もそれが核になった経営手法だと言えます。(※2)

最近の新聞で見つけたのは、ハマキョウレックスという物流の会社です。(※3)この会社のことは実はよく知りませんが、記事によると、全国57ヵ所の物流センターで「収支日計表」と呼ぶ簡単な損益計算書を作成し、「現場がリアルタイムで日々の損益を把握することで、機動的な費用削減に成功している」のだそうです。パート従業員も収支日計表の情報を共有しているとあります。

こんな風に、会社全体の決算情報を開示するというより、現場に近い組織単位で、しかも日次などの短い期間での開示のほうが意味があります。当事者にすばやい意思決定を促すことができるからです。

オープンブック・マネジメントは、単なるブック(帳簿)の開示ではありません。それにもとづく意思決定とアクションを望むわけですから、受け手である現場の従業員がそれを読んで判断できるようにすること、決定して実行できるようにすることが重要です。つまり教育と権限付与をセットにすることです。

そう、もうお気づきですね。この部分が「エンパワーされた社員」です。エンパワーは、
・知識や技能などを高める教育などをする面と
・決定、実行の権限を付与する面
の両方があると思います。


あなたの会社組織はオープンですか? どんなところがオープンでしょう?

あなたはエンパワーされていますか?(またはエンパワーしていますか?)
 どんなエンパワーをされて(して)いるでしょう?

※1: オープンブック・マネジメントを紹介した本:
・ジョン・ケース「オープンブック・マネジメント」2001年10月(原著1995年)
・ジャック・スタック「グレートゲーム・オブ・ビジネス」2002年6月(原著1992年)
 ※新訳版「その仕事は利益につながっていますか?――経営数字の「見える化」が社員を変える」2009年1月

※2:アメーバ経営についての本:
・稲盛和夫「アメーバ経営」2006年9月

※3:日経新聞、2009/03/04付、投資・財務面「逆風下の健闘企業⑤ ハマキョウレックス 現場で毎日の損益を把握」
・ハマキョウレックスの会社ウェブサイト: http://www.hamakyorex.co.jp/index.html

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2009年3月23日 (月)

リフレクションを促すしかけを設計する

今年の初めから受講している、アクションラーニングコーチ(ALコーチ)のシニアコース、先週の講座は「リフレクション」がテーマでした。

シニアコースというのは、上級資格の「シニアALコーチ」を取得するための講座で、トレーナーコースとプランナーコースに分かれています。先週のはプランナーコースの第2回。プランナーコースでは、ALセッションを含むプログラムを組織に導入するプランの立て方を学びます。※プログラムというのは、例えば1シリーズの研修コースです。

コーチ資格を認定している日本アクションラーニング協会の「アクションラーニング」は、「アクションラーニング」の中でも「リフレクション」を重視するもので、とくに問題解決(の具体策を立てる)とリフレクションによる学習に焦点を当てた1時間程度の話し合いセッション(を手法化したもの)を、コアにしています。この話し合いセッションのことを、最近ではわかりやすく「質問会議」と名づけています。

大雑把に言うと、ALコーチは「質問会議」でコーチ役を務めることができ、シニアALコーチは「質問会議」を含めたアクションラーニングのプログラムの導入までできる、という区分になります。プログラムの導入目的は組織によりさまざまです。

話が少し広がってしまいましたが、講座のテーマは、いかに「リフレクション」が起こりやすいしかけを組み込んだプログラムを設計するかです。例えば、「振り返りシートを書く」だけでもリフレクションが促されます。そういう意味では簡単。しかし、狙いとするリフレクションは、どのレベルのことなのか、を考えたうえで、適切なタイミング、適切な質問などを用意することが重要です。もう少し「リフレクション」自体について、深く知ることが必要だと感じています。

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2009年3月22日 (日)

ビジネス会計検定の結果

090322_151950_b_2 2月の記事「ビジネス会計検定」で、2級を受験した感想を記しました。肝心の(?)検定結果ですが、無事合格していました。(ホッ)

いや、先の記事では「難しかった」と予防線めいたことを書きましたが、落ちていたらしゃれになりませんでした。(苦笑)

合格率は31.3%、受験者数1,137人中356人が合格。前回=第2回の合格率が29.8%、第1回が41.0%なので、ここ2回は約30%です。(※1)

ということは「難しかった」という私の感想は、「前回比」では的外れだったと認めるべきでしょう。私自身は今回が初めてだったので前回との比較ではなく、数値計算の問題が不必要に難しいと感じたのですが、検定としてはその水準を求めていると考えるべきでしょう。

しかし、受験者数が、3級、2級とも減少傾向にあるのが気がかりです。せっかく良いコンセプトの検定なので、受験者数を10倍ぐらいにし、合格水準のハードルを少し下げて、2,3級の合格者がごろごろいる状態を目指してほしいと思います。

※1: ビジネス会計検定 試験結果のページ

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2009年3月19日 (木)

「少々お時間がかかりますがよろしいですか?」

人と待ち合わせがあってスタバに行ったときのこと。

「ふつうのコーヒー、ドリップコーヒー、ショートで」

と言いながら、メニューの下に小さく「ディカフェ」(カフェインレス)があるのに気づいて、

「やっぱりデカフェにしてもらえますか?」

と言い直すと、返ってきたのがタイトルのセリフ。


「あ、まぁ、いいですけど」と答えたのですが、すかさず別の店員さんが、

「5分ぐらいかかりますけど、よろしいでしょうか?」

と畳み掛けてきたので、つい、

「あ、あぁ・・・、じゃ、まぁ、ふつうのでいいです。」

と答えてしまいました。

返事をしながら頭によぎったのは、なに、デカフェは売りたくないの?という疑問でした。親切で尋ねてくれたのだと思いたいけれど、疑念は消せません。この店にかぎらず「時間がかかるがよいか?」を聞かれて、同じように感じることがときどきあります。


じゃあ、どう尋ねればよかったのでしょう?

受け取り方には個人差があるので断定的なことは言えませんが、私なら、

「5分ぐらいかかりますが、お待ちいただけますか?」

の方がプレッシャーが小さい感じがします。「よろしいでしょうか?」と言われると、「それでも注文するのか?」と迫られているような気がするのは、私だけでしょうか?

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日教組宿泊拒否問題で書類送検のニュース

1年半ほど前の2007年11月、グランドプリンスホテル新高輪が日教組(日本教職員組合)の集会の会場使用契約を解除した事件がありました。

その件で、警視庁が同ホテル運営会社のプリンスホテル(法人)と社長らを書類送検した、との記事が昨日の新聞にありました。(※1,2)

ところがよく読むと少し変です。

送検理由となった旅館業法違反容疑は「宿泊拒否」。ホテル側は、会場の契約キャンセルと同時に集会参加予定者の宿泊予約も取り消したとありますが、法律では宿泊以外の宴会場などの使用拒否は禁止されていないらしいのです。

まるで別件逮捕みたいな話です(違うんですが)。

警視庁も悩んだことでしょうけれど、少なくとも適切な企業行動を促す解決策とは思えません。今後、ホテルは会場の使用拒否をしても、宿泊拒否をしなければいいという話にならないでしょうか?

この件で日教組がホテル側に対して損害賠償訴訟を起こしているのも、同じく適切な解決策とは思えません。会場使用を断るホテルが増えるだけではないでしょうか?

昨日の新聞には「右翼団体の街宣活動の可能性などを理由に」と書かれているだけですが、事件後まもない時期の日経ビジネスでホテル側の人が主張していたのは、他の宿泊者や近隣の学校や住民への配慮だったように記憶しています。それは経営の感覚からすると十分理解できるものでした。

この場合、原因は周囲に迷惑をかけるような音で街宣活動をする人たちなのですが、罪に問える行為ではないのでしょう。一方で、日教組が集会を行えなくなれば、そうした街宣活動をする人たちの思うつぼでしょう。

日教組は、自分たちの集会が結果的に、ホテル、宿泊者や近隣の人たちを巻き込むことを認めたうえで、ホテル側や警察、近隣の人たちと協力すべきではないでしょうか?

警察はホテルを別件で立件するのではなく、次にこういうことが起こらないように、解決策や問題の緩和策を協議すべきでしょう。

ホテル側も(有無は確認していませんが)警察と連携を図るなどの方策を探るべきだったのだと思います。

決して口で言うほど簡単なことではありません。しかし、現代社会で求められる企業の社会的責任というのは、そういう取り組みなんだろうと思います。

※1:日経新聞2009/03/17付夕刊、社会面「プリンスホテル書類送検」
※2:書類送検というのは身柄を拘束せずに「検察官送致」することらしい。そのあと検察官が裁判所に起訴するかどうか決めるのだそうです。

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2009年3月18日 (水)

「マネジメント2.0」

今月発売のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューに、「コア・コンピタンス経営」「経営の未来」などの著書で有名な、ゲイリー・ハメル氏の「マネジメント2.0」という論文が掲載されています。(※1)

20世紀に発展した「マネジメント(1.0)」のパラダイムをシフトさせるのが「マネジメント2.0」。そのための課題を25つ挙げています。(※2)

私たちの世代は、20世紀に一応の完成を見た「マネジメント」を革新して、新しい「マネジメント」を創造していく責任があると思うのですが、大いにその参考になります。


25の課題の1番目は「経営層がより次元の高い目的を果たす」というもの。

特に重要とされる最初の10項目の中には、ほかに
4.「階層制の欠点を取り除く」
6.「管理手段を刷新する」(自律的なコントロールを促す)
7.「リーダーシップを問い直す」
10.「組織を小単位に分ける」
などがあります。

弊社のテーマ「オープンな組織とエンパワーされた社員」に関連するものでは、
12.参加型の手法を用いて組織の方向性を決める
15.情報をできるだけ広く共有する
17.社員の裁量の幅を広げる
23.社内外の力を動員できるよう、新たなマネジメント手法を考案する
などがあります。

短い見出しだけでは何を言わんとするのかわかりにくいので、ぜひ論文(記事)をお読みください。

※1:ゲイリー・ハメル、「新時代へ向けた25の課題 マネジメント2.0」、
pp.58-72,DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2009年4月号

※2:シリコンバレーの非営利研究機関「マネジメント・ラボ」が開催したカンファレンスで選ばれたもの。

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2009年3月17日 (火)

協力を仰ぐ

週末は大学院時代の恩師の還暦お祝いパーティーがあり、そのお手伝いをしました。

企画・運営は有志で、話し合いのための全体会合は一切なくメーリングリストのみで行いましたから、なかなか難しくもどかしい面もありました。一方で、現在海外に在住しているメンバーが積極的に参加するという、メーリングリストならではのメリットもありました。

実際、何人かの中心人物の地道な作業等がなければ動かなかったのは確かですが、しっかりした組織がない中、自発的な分担だけでよくやれたものだと思います。

メール・ファシリテーション的な要素も重要でした。

良い反応が得られたのは、ある業務の担当を引き受けると自ら名乗り出たうえで、協力者を呼びかけたとき。また、担当業務について経験談やアイデアの提供をお願いしたときも、多数のレスポンスが得られました。

一番に名乗り出るのは難しくても、誰か一緒にやってくれるなら、という安心感は確実にあります。また、自分は別の担当をする、あるいは担当まではちょっと、という人でも、知識やアイデアを提供するぐらいならできる場合もあります。ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、アイデアだけでよければラクで楽しい、という面もあります。

配慮は必要なものの、自発的なものですから最終的には実際に動く人が決定権を持つことになります。結果、実らないアイデアも多いのですが、それよりも参加度を高めるきっかけとなる効果があったと思います。

担当を引き受けたからと独りで抱え込まずに、あえて協力を仰ぐと、思いもよらぬ協力者や知恵が出てきたりして、より積極的な参加者を増やす効果があるのではないでしょうか?

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マイ箸を洗うというサービス

ピーク時を過ぎて昼食に入ったお店でマイ箸を使って食べていると、カウンターの向こうにいたお店の人が、声をかけてくれました。

「たべぉわったらぉはしあらぃますね」

一度目は聞き損ねて聞き直してしまった。

「食べ終わったら、お箸洗いますね」

おっ、初めてです。

マイ箸率100%にはほど遠いものの、まぁちょくちょくぐらいは使っているのですが、洗ってくれるサービスは初めて。でもこれはいい。だって、紙ナプキンとかで拭って箸入れに入れるわけですから、あとで洗わないといけません。それもマイ箸のハードルの一つ。

お店の人は、水できれいに洗ったあと、ペーパータオルで水気を吸わせて、そのまま持つ側をこちらに向けて渡してくれました。そのへんの細かな心遣いも好印象です。

庶民的な価格のチェーンの店です。混んでいない時間帯であったこと、カウンター席のすぐ向こうに流しがあったこともあったのでしょうけど、久しぶりにいいサービスに出会ったと感じました。

少し前まではマイ箸を使う人はわずかだったと思いますが、いまどき私でも使うようになりましたから、マイ箸人口は確実に増えています。

一方、割り箸をやめて、ふつうに洗って繰り返し使うタイプの箸に切り替えている店もあります。本来、そうする方がよいのかもしれませんが、食事後に洗ってくれるサービスも「あり」なのだと感じました。

大げさに言うなら、お店側で未解決の問題(割り箸使用)を、客側が解決する(マイ箸持参)という枠組みのもとで、お店側が客側の解決に協力する(マイ箸を洗う)という関係です。

ケースによるでしょうけれど、少なくとも「問題」がどっちの責任かが明らかでないかぎり、双方が現実的な解決に向けてできることから始めればよいわけです。

そのような視点で自分の関わる事業・商品を見直すことはできないでしょうか?

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2009年3月13日 (金)

「自己資本比率」

第1回 「自己資本比率」とは? 《決算書を「よくわからないままでも」読む》※1

■ポイント
1)自己資本比率は、値が大きいほど財務の安全性が高い(つぶれにくい)
2)最大100%まで。例外的にマイナスもある
3)50%以上あれば十分高い
4)上場企業平均は約35%
5)60〜70%以上は高すぎるかもしれない(安全性とは別の観点で)
6)金融機関は事業会社より低く、よく耳にする銀行のそれは算出式が異なる

■用語の意味
・「自己」: その会社自身(=持ち主としての株主)を指す
・「資本」: 企業活動に投じられている資金(元手)のこと
・「自己資本」: 、資本全体のうち、その会社自身(株主)のものを指す
   (⇔他人資本: 借金など、後で返したり支払ったりする必要がある資本)
・「比率」: ここでは「資本」全体に対する「自己資本」の比率で表す

■解釈
・自己資本は他人に返したり支払ったりする必要がないので、安定的な資本
 この割合が大きければ、支払いに行き詰まる状態になりにくいので、財務の
 安全性が高いと判断する。
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※1: この記事は実験的な試みです。企業の決算書を「わかる」というステップを抜かして、いきなり読みたい方のための解説のシリーズです。途中で挫折するかもしれませんが、ご意見、ご要望をぜひお寄せください。

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研究会に参加(珍しく・・・)

「国際戦略経営研究学会」という、なかなか難しそうな名前の学会の会員になっています。昨日、会場が近く、
知り合いも行くという条件がうまく重なったので、その研究会に初めて参加しました(聞くだけですが・・・)。

報告されたテーマは「デジタル家電産業におけるビジネスモデルによる競争」という、なかなか興味を惹く内容でした。(※1)

話を聞いても、すぐに何かで使うあてもなければ、聞いただけで使えるわけでもありません。それでも価値があると感じます。

学会の報告というのは、ビジネスの現場に比べて高い論理性が要求されます(もちろん実用性の観点で劣る場合もあるわけですが)。そういう思考の枠組みの中に2時間ぐらいでもどっぷり入り込むと、脳ミソが軽くかき回される感じで刺激を受けます。慣れない頭の使い方を強いられるわけです。

やわらかい方の頭の使い方や音楽や運動なども刺激になります。創造的な仕事をするためには、様々な脳ミソの使い方が大切なのでしょう。

※1: 報告者:丹沢安治教授(中央大学)、テーマ:「デジタル家電産業におけるビジネスモデルによる競争──垂直方向の分解、系列化、統合の決定要因と対応する企業戦略」、第4回戦略経営研究会理論研究会(2009年3月12日)

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財務諸表をどこまでわかりたいか?

財務会計の入門レベルの研修を提供していますが、最近の悩みは「果たして受講者は本当にわかりたいのか?」という疑問です。

ポストイット(R)を用いた演習などを通して、企業活動とBS,PL,CFの財務三表のつながり、三表それぞれのつながりが「わかる」ための工夫をしており、受講者からも高い評価をいただいています。

しかし。

1日の研修だと、あまり「わかる」に時間をかけると「使う」という本来の目的のウエイトが小さくなるのも事実です。かと言って、わからないまま使うのはとても危ういのも事実。ジレンマです。

また、上のような「つながり」は本を読んだだけではわかりにくいので、研修ではそこに力を入れるべきだという考えもあります。


そこで反省するのは、「わかるレベルを教える側の基準で定めていないか?」という点です。冒頭の疑問を正確に言い換えるなら、「果たして受講者は本当にそこまでわかりたいのか?(それより、もっと使えるようになりたいのではないか?)」となるでしょう。

受講者にも職務の差、経験の差、個人差などがあるので一概には言えませんが、もう少し「わかる」より「使う」のウエイトを高めてみようと考えています。

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2009年3月10日 (火)

研修の効果が持続しないのは・・・?

研修関係者が集まった席でのこと。外部講師として研修をする立場の人が、研修の効果が持続しないのが悩みだと発言しました。なぜ持続しないと思うか、という問いへの答が私の記憶に強く残っています。

「研修の効果が持続しないのは、研修だからだ」

つまり、その人によれば、ふだんの職場を離れた非日常的な空間で学んだことを、いつもの空間で活かすことがそもそも難しい、というのです。

うーん、これは重い課題。「研修」という形でお手伝いする場合、ほとんどはオフサイトの(=職場を離れた)集合研修ですからこの問題からは逃れられません。逆に言えばこの問題は、わかっていても対処できないケースがほとんどなために、正面から向き合うのをあきらめてしまっていたところがあります。痛く反省させられました。

もっとも「研修だから持続しない」というジレンマのあてはまる度合いは、内容などにもよるでしょう。そのうえで、どんな改善策があるか?

1つには、月並みながら「研修」を前提に効果を持続させるための工夫すること。いわゆるフォローのしくみをきちん整えることでしょう。自戒を込めて言うと、外部講師の立場でもそこに踏み込む働きかけをすべきでしょう。

もう1つは、「研修」という枠組みを外して、現場(職場)に学習を持ち込むこと。例えば現場に講師(コンサルタントやファシリテーター)が入っていく、OJTを支援する、といった方向が考えられます。

ほかにはどんな改善策、具体策がありそうでしょう?

効果的な答えを見出せれば、「研修」に新たな意味を与えることができるでしょう。

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「社会からアテンションを向けられること」

昨日の日経新聞で東大大学院教授・姜尚中氏が次のように述べています。弊社の理念「働くことの意義を高める」と関連しているので引用します。(※1)

 日本人は働くということを企業や市場との関係においてだけ考えてきたのではないか。これからは社会の中で働くことの意味を考えることが大切だ。

 私は働くということは最終的には社会からアテンション(注意)を向けられることだと考えている。近くにいる家族だけではなく、匿名の他者が働きを認めてくれる。匿名の他者との相互承認を経て、社会の中に自分の居場所を見つける。自分の全人格を組織や企業に投入するのではなく、社会とのつながりを常に意識することが必要だ。

このあとに続く文章では、職場内での人間関係や顧客との関係も触れられていて、“企業や市場を介した”社会とのつながりを否定する内容ではありません。

思うのは「近くにいる家族」や「匿名の他者」だけではなく、日常的に職場で接する同僚たちや取引先や顧客の人たちもいる(!)という事実です。こうした人たちを含め、人とのつながりをもっと大切にすべきだ、と解釈して良いと思います。

一方で「企業や市場」に象徴される「経済的成果の生産」抜きで「働くこと」が成り立つわけではありません。

「商品を売る/買ってもらう」こと1つ採っても、経済的成果があればこそ取引が成り立つわけですし、同時に顧客からのアテンション(あるいは顧客とのつながり)を感じることはできるのです。

さて、アテンション、あるいはつながりをもっとリアルに、ダイレクトに感じる/伝えるために、われわれにできることはなんでしょうか?


※1:日経新聞2009/03/09付 特集ページ 「働くニホン 現場発 新しい働き方を考える――識者の提言」より

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「フルコスト主義」

今週の日経ビジネスの特集は「人を切らない経営  雇用騒乱 社員はコストか」。

記事中で紹介される、ダンボール国内最大手レンゴーの大坪社長が実践するのが表題の「フルコスト主義」です。(※1)

「資本」「税」「社会」「労働」への再分配をすべて費用として価格を決める考え方
だそうです。

ふつうのコストの考え方とどこが違うのでしょう?

「これまでの製造業は限界利益を追うことばかりを考えてきた」ために、固定費である人件費を削減し、さらに変動費化した非正規社員の人件費削減にまで踏み込んでいるのが現状だといいます。

一方、フルコスト主義は「労働への再分配」も製品価格の決定要素になり、「取引先にフルコスト主義が認められなければ、ウチは仕事を休ませてもらう、という強い意志が必要」だと説きます。その姿勢で値上げ交渉に挑んで実現したことがあるのだそうです。

ちょっと違いがわかりにくいかもしれません。要するに原材料や設備などの費用はメーカーとしてコストダウン努力の対象にするけれど、本来必要な人件費(労働への再分配)はコストダウン努力の対象にしない。それよりも、こうしたコストを確保できる価格水準を実現する努力をせよ、ということだと解釈できます。


ちなみに、日経ビジネスはここ2,3年、わりとはっきりと従業員を大切にする論調が感じられます。経営者層が中心読者というイメージがありますが、おもねることなく、警鐘や新しい経営のあり方をメッセージとして発信するという姿勢でしょうか。

※1:日経ビジネス 2009年3月9日号 pp.28-30 「派遣を正社員化する真意  レンゴー・大坪社長、均等待遇への通過点」より

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2009年3月 8日 (日)

「短時間正社員」という選択肢

先週金曜日(3/6)の日経夕刊に「短時間正社員」の記事が載っていました(※1)。

「短時間正社員」というのは、原則無期契約(定年まで雇用)で、所定労働時間が一般のフルタイム正社員(週40時間程度)より短い社員のことらしいです。給料などの処遇も、正社員と同等であること(もちろん時間には比例)もポイントです。

こういう働き方の選択肢が増えることには賛成です。注目されているワークシェアリングだけでなく、ワーク・ライフバランスの観点やダイバーシティの観点でも望ましいと言えるでしょう。

働く人にとっての選択肢が増えるということは、会社側から見ても働いてくれる人の選択肢が増えるわけですし、多様な人材(才)を集めることができます。「働くことの意義を高める」施策・制度の一つだと思います。

記事では、サイボウズ社のフルタイム正社員の女性が、大学院のMBAコースに通うために週4日勤務(うち1日は授業のために定時退社)の「短時間正社員」になった、という事例などが紹介されていました。

実は私自身、もう10年近く前ですが、大学院に通うのに土日以外に平日1日を休ませてもらう勤務形態を認めてもらっていました。休んだ1日分は残り4日に長く働いて、ある程度カバーする形です。

おかげで、2年間で修士課程を修了することができました。それでも両立は体力的にきつかったのを覚えています。

大学院にはかぎりませんが、さまざまな事情で、一時的にでも働くスタイル、時間数を変えるという選択肢が広がることを期待しています。

※1: 2009/03/06付 日経新聞(夕刊)らいふプラス欄「広がる?短時間正社員」

■参考: 記事で紹介されていた厚生労働省委託による支援サイト
「短時間正社員制度導入支援ナビ」

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2009年3月 6日 (金)

「働くことの意義を高める」

会社のウェブサイトで「経営理念」のご紹介をしていますが(※1)、実は少し長いので、もっと凝縮した表現はないものかと考えておりました。それがタイトルの言葉です。

「働くことの意義」とは何でしょうか?

ここですべて規定してしまうつもりはありませんが、基本的にはこんなことだと思っています。

1)働くことを通じて自分や同僚が成長すること
2)働くことを通じて才能を発見し、発揮すること
3)働くことからやりがいや充実感を得ること
4)働くことを通じて人間関係を築き、存在感を得ること
5)働くことで顧客や組織や自分自身に経済的な成果を生み出すこと

(ほかにもあれば、教えてください!)

ちなみに、「働くことの意義」は、「働きがい」のような本人の心理的な充実感だけではありません。才能の開花を通じた組織・社会への貢献もあります。仕事をきっかけにした人と人との深いつながりもありますし、株主にとっての経済的価値を生み出すことも含まれます。

こう考えると幅が広すぎて「いったい何をやるんですか?」という疑問がわくかもしれません。(笑)

しかし、そんな難しい話ではありません。基礎レベルの財務研修を例にみてみましょう。

まず、株式会社の「利益」の計算方法などを学ぶこと、より効果的に「利益」を生み出すための基礎になるので、働くことの経済的成果を高めるのに役立ちます。

また、財務諸表を通じて会社全体(連結グループ)の状態を知ることで、自分の部署の仕事の位置づけ、その方針などが理解しやすくなります。目の前の部分だけを見て仕事をするのと、全体像をイメージしながら仕事をするのとでは、働くことから得られるやりがいや充実感が違います(※2)。


さらに、大きな会社組織全体で1つの経営指標を目標として共有することは、「(ただ)同じグループで働いている人」との心理的距離を縮めないでしょうか?
これも財務諸表を学ぶことで得られる意義だと思います。

ほかにも、技術職や営業職で、それまで財務に触れてこなかった人が、学んだことをきっかけに経営的視点を持ち、気づかなかった才能を発揮し始めるかも知れません。

もっと直接的で劇的な方法もあるでしょう。しかし、まずは大きな絵を視野に入れながら、今できる「働くことの意義を高める」活動に取り組んでいくつもりです。


※1: 定款に記載している経営理念
働く人が能力を高めることができ、才能を発揮でき、充実感と存在感を得られ、そして経済的な成果も生み出せる、そんな職場・会社を増やすことを当会社の使命とする。

※2: 石切り職人の話が有名です。例えば、田坂広志氏のコラム

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2009年3月 5日 (木)

片隅の成功者(ポジティブ・デビアンス)を探そう

経営学・組織変革の世界に「ポジティブ・デビアンス」という考え方があります。組織や社会の中には、例外的な存在だがうまくいっているケースがあるものです。それを見つけ出して、モデル/ヒントにして変革を進めるようとするものです。

まだ定訳がないようですが、「片隅の成功者」、「正の逸脱」、「参考にすべき逸脱者」などと訳されています。英語では"positive deviance"。

(ポジティブ・デビアンスから学ぶ)

現在のような変革期には、組織の中のポジティブ・デビアンスを探し出し、学ぶことがきわめて有効なのではないでしょうか?
そこに次の成功モデルが芽生えている可能性があります。

もっとも、ポジティブ・デビアンスは見つけにくいとされます。というのは、従来の理論や知識ではうまく説明できなかったり、「例外」として切って捨てられるほど小さな規模であったりするからです。

(なぜ見つけにくいのか?)

組織の主流派、これまで成功している人たちのやり方から見れば、そのやり方は「???」です。うまくいっていることを説明する言葉やフレームワークがないのです。「逸脱者」自身も説明できるとはかぎりません。狙って成功しているケースもあるでしょうが、(本人にとっては必然でも)たまたまうまくいったケースもあるからです。

そうすると、その「片隅の成功者」は、いろいろな理由をつけて「特殊事例」という見方をされます。「女だから」「お客さんが特殊だから」「今はたまたまだよ」「あの人のキャラクターでないとね」etc.・・・
だって、そうでもしなければ主流派は落ち着かないではありませんか!

こうして「ポジティブ」な面が無視されて、「わが社にはそんな成功者はいない」という結論になるのです。

(どうすれば見つけられるのか?)

理論や知識との整合性でなく、事実にフォーカスする必要があります。

もちろん、すべてのポジティブ・デビアンスが次の成功モデルになるとは言いません。しかし、そこに何かを見出そう、何かヒントになるものがあるはずだ、という意識で向き合うことが大切です。

組織・社会の学習力が問われる瞬間です。


【参考】
●「ポジティブ・デビアンス」と、それに注目する変革手法については、この論文が詳しい。
・リチャード・タナー・パスカル、ジェリー・スターニン、ポジティブ・デビアンス: 「片隅の成功者」から変革は始まる、DIAMOND
ハーバード・ビジネス・レビュー(ダイヤモンド社) 2005年9月号、pp.40-51.

●この本でも「経営管理の未来を垣間見る方法」として「正の逸脱」に注目している。
・ゲイリー・ハメル、ビル・ブリーン、経営の未来――マネジメントをイノベーションせよ、日本経済新聞社、2008/02、pp.237-239

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2009年3月 4日 (水)

「命令では人は変わらないし、動かない」

今朝の日経にソニーのハワード・ストリンガー会長兼CEOのインタビュー記事が掲載されています(※)。タイトルは同氏の言葉。

「命令では人は変わらないし、動かない。それがこの十年間で得た教訓だ。今回は必要なステップを踏んでおり、変革はやりやすい。妥協は許さない」


驚くのは、ストリンガー氏にして、「命令で人は変わらないし、動かない」という教訓を得るのに、十年間かかったという点です。

私のような、人材(才)開発に関わる仕事をしている者の業界では、ある意味、常識です。

しかし、米国で活躍してきた60代後半の経営者にとって、この教訓を得るのは難しかったのでしょう。それだけでなく、権限にもとづく命令を基本とする組織の中で成功してきた人は誰でも、いや、そういう人ほど難しいはずです。

−−−

ご存知のようにソニーは、今回(4月1日付)の組織改革でストリンガー氏が社長を兼務することになりました。氏への権限集中でトップダウン型の色彩が強くなった印象ですが、上のコメントを聞くと、それほど単純でないことが想像されます。

「命令では人は変わらないし、動かない」ことを踏まえた上で、組織のトップとして変革をリードする、という難しい課題に取り組むわけです。

ストリンガー氏の今後の動きに注目し、変革期・過渡期のリーダーシップのあり方を学びたいと思います。


※: 2009/03/04付 日経新聞 企業総合欄 「ソニー ストリンガー氏、社長兼務」

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2009年3月 3日 (火)

「内発的動機を引き出す」

よく、「内発的動機を引き出す」と言われますが、そういう考え方は有効なのでしょうか?
「内発的」なものを、どうやって他人が「引き出す」ことができるの? という素朴な疑問です。

1)外発的動機づけ、内発的動機づけ

 動機づけ(モチベーション)の理論によれば、動機づけは、要因の種類によって「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の2つに分けられます。

動機づけ要因が本人の外にある、つまり報酬や賞賛などによるものを「外発的動機づけ」と呼びます。他方、本人の内にある、つまり仕事や勉強など、動機づけの対象となった行為そのものに、やりがいや楽しさを感じることによるものを「内発的動機づけ」と呼びます。

ちなみに「づけ」はしばしば省略されます。(以下、省略します)

2)なぜ、内発的動機?

 外発的動機は、要因となる報酬などがなくなったり、当たり前になったりすると低下するので、仕事の世界では、これに依存しすぎるのはよくないとされます。

これに対して、内発的動機は本人の主体性が発揮されるので、粘り強さや創意工夫が現れやすく、これをいかに高めるかが、最近のビジネス界での大きな課題の1つになっています。

3)内発的動機は「引き出せる」か?

外部である他人がどうこうして、動機が高まるのであれば、それは「内発的動機」ではありません。これは言葉の定義の問題です。

では、どうしようもないのか、というとそんなことはありません。

「高める」ではなく「引き出す」という、きわどいニュアンスがポイントです。つまり、直接的な刺激で変化を起こそうとするのではなく、環境を整えることによって、時間をかけて本人の内側から動機が高まりやすくするのです。

4)本当に「引き出し」ているか?

でもこれ、本来あるものを「引き出す」のですから、本人を変えるのではなく、本人に合わせて環境を変えるのが基本です。その境界はグレーゾーンですが、行き過ぎて本人を変える方に傾けば「洗脳」でしょう。

結束力の固い組織に長くいれば、半ば洗脳された状態になることもあるでしょう。それが問題になるかどうかは、次の二つの視点でチェックすることが有効ではないでしょうか。

  • その組織の活動が社会に受け入れられている(もちろんコンプライアンス面でも)
  • その人が、組織外での生活においてとくに問題なく人間関係を持てる

5)理論としての有効性

「内発的動機を引き出す」というきわどい表現自体が、この理論の脆さを教えてくれています。仕事の場での「動機づけ」について、要因のありかを人間の「内部」か「外部」かに分けるのは、あまり意味がないことのように思えます。例えば、犯罪を裁く場では、この違いは重要に思えます。

おそらく、5〜10年後にはビジネス、組織開発の世界で「内発的動機」という言葉は廃れているでしょう。むしろ、これからは、

  • 高い質の動機づけは、どのような要因や環境を組み合わせることによって起こりやすいのか?
  • 仕事の性格に応じて求められる動機づけの「質」はどんなものなのか?
  • 個人の資質や経験などによって、動機づけの要因や環境はどのように変えるべきなのか?

といったことが問われ、実践や理論化が進んでいくのではないでしょうか?

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2009年3月 1日 (日)

昔の友人に会う

先週、中学時代の友人と28年ぶりの再会! お互いほとんど変わっていないように感じるから驚きです。

ともに京都で育って東京で仕事をしているのに、ずっと連絡を取り合う機会がなかったのですが、別の友人を介してつながることができました。ITの進歩がもたらしてくれた幸せです。

気づいたのは、彼と話していてすごくラクなことです。京都弁ということもありますが(笑)、現在の人間関係ではなく昔の関係にもとづいているので、余計な緊張が少なくてすむような気がします。裏返せば、ふだんは無意識のうちに薄い鎧(よろい)を纏っているということなのでしょうか。

もう一つわかったのは、二人とも40を過ぎて人生の折り返し地点に来た(過ぎた)と感じていること。「これから先」がなんとなく無限大に広がっているような感覚から、有限の「残りの人生」という意識に変わった点です。

冷静に考えるともっと早く気づくべきだったのでしょうが、頭でわかっているのと、そう実感するのとは違うものです。

いろいろなことを感じた、そしてとても楽しいひと時でした。

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20世紀に栄えたもの、21世紀に栄えそうなもの

1月の全国百貨店売上高が、前年同月比△9.1%で11ヶ月連続のマイナスになったというニュースがありました。(※1)

今更ながら、「百貨店」という業態のピークは20世紀だったんだなぁと感じ入ります。

米国では新聞社が業績悪化に苦しんでいるというニュースもありました。(※2,3) 新聞も20世紀に興隆を極めたメディアとして歴史に記憶されるのでしょう。

マーケティングの世界に「製品ライフサイクル理論」がありますが、この2つのように今、大きなカテゴリー単位でライフサイクルの衰退期を迎えているものが多いのかもしれません。単なる景気後退の影響ではなく、ライフサイクル上の衰退が加速していると捉えるのです。

では、ほかにどんなものが、衰退期を迎えつつあるでしょう?
試しに仮説のリストを作ってみましょう。

(20世紀に栄えたもの)  (21世紀に栄えそうなもの)

・百貨店          ・ネットショップ ?
              ・コンシェルジュ(サービス総合窓口)?

・日刊新聞紙        ・ネット配信ニュース ?

・ガソリンエンジン自動車  ・電気自動車 ?

・化石燃料(石炭、石油)  ・太陽光、風力など自然エネルギー ?


ちょっと大胆に範囲を拡げてみましょう。

・米国&ドル通貨      ・?

・階層型組織(官僚組織)  ・フラット/ネットワーク型組織 ?

・株式会社         ・?

・トップダウン型リーダーシップ  ・サーバントリーダーシップ ?
                 ・分散型リーダーシップ ?


 さて、リストの続きは皆さんもどうぞ。自分のお仕事の業界にあてはめてみるのが面白いかもしれません。私の場合はこんな具合です。

・集合型社員研修      ・eラーニング、OJT ?

・コンサルティング     ・問題解決&ラーニング支援 ?


※1:百貨店売上高の前年同月比の値は店舗数調整後。参照サイト:日本百貨店協会プレスリリース

※2:「米老舗日刊紙、休刊も サンフランシスコ・クロニクル」

※3:「破綻の米トリビューン紙、再建かけタブロイド判を投入」

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