パスタの1分前、カレーのルー2種類
パスタをアルデンテに茹でるには、袋に書いてある「ゆで時間」より1分ぐらい前にお湯から上げる、というコツが広まっています。そのあと加熱しながらソースを和える時間を含めて「ゆで時間」になるようにするとよいらしいです。私も何度か試していますが、確かにその方がおいしく出来上がります。そして、ふと思うのです。
パスタメーカーの開発者はくやしいだろうな、と。
勝手な想像に過ぎませんが、表示の「ゆで時間」を修正するコツが広まるのはとてもくやしいことでしょう。そのほうが美味しかったらなおさらです。
まさかパスタメーカーの人が、消費者が茹で上げたパスタをそのまま食べると思っているはずがありません。ソースを和える時間があることがわかってはいても、表示を変えることが難しいのかもしれません。あるいは消費者の好みがアルデンテに変化したせいなのかもしれません。
いずれにせよメーカーの人としては、なんとかしなくてはならない問題だと思います。
同じような話においしいカレーを作るには2種類のルーを使う、というコツがあります。私が開発者なら、かなり悔しい。だってルーは、スパイスを調合したものであって、美味しくなるような組み合わせを研究し尽くしているはずなのに!
こちらは何が起こっているのでしょうか?
ある人に聞くと、ルーを2種類使うだけでなく、隠し味にフルーツなども使うと言います。それが「わが家の味」らしいのです。
それを聞いて、なるほど、わかりました。消費者のカレーに対する味覚・調理技術は、ルーの先を行く進化を遂げていたのです。肉や野菜の素材、カレールー、隠し味を組み合わせるコーディネート品に発展しているのです。従来ルーは、味を規定する強い支配力を持ったコアパーツだったのですが、支配力が低下し、お気に入りの味を生み出すためのパーツの一つになってしまったのです。
と考えると、メーカーの戦略にもいくつか選択肢が出てきそうですね。近いうちにそういう製品が登場するを楽しみにしていましょう。
両方の事例とも《消費者の成熟化》という言葉で括ることができそうですし、後者は《ユーザーイノベーション》の領域に入るかも知れません。
さて、わが身を振り返ってみましょう。(読者のあなたもどうぞ)
・自分の作っている製品、売っている商品がお客様にどんな使われ方をしているか、実態をつかめているだろうか?
・お客様が使いこなすために工夫することを想定して、利用しやすい形態や関連情報を提供しているだろうか?
私の場合はいろいろと反省させられます。パスタとカレールーに学んで、今後の開発に活かしたいと思います。
※2009/04/01 一部加筆。
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