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2009年3月 3日 (火)

「内発的動機を引き出す」

よく、「内発的動機を引き出す」と言われますが、そういう考え方は有効なのでしょうか?
「内発的」なものを、どうやって他人が「引き出す」ことができるの? という素朴な疑問です。

1)外発的動機づけ、内発的動機づけ

 動機づけ(モチベーション)の理論によれば、動機づけは、要因の種類によって「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の2つに分けられます。

動機づけ要因が本人の外にある、つまり報酬や賞賛などによるものを「外発的動機づけ」と呼びます。他方、本人の内にある、つまり仕事や勉強など、動機づけの対象となった行為そのものに、やりがいや楽しさを感じることによるものを「内発的動機づけ」と呼びます。

ちなみに「づけ」はしばしば省略されます。(以下、省略します)

2)なぜ、内発的動機?

 外発的動機は、要因となる報酬などがなくなったり、当たり前になったりすると低下するので、仕事の世界では、これに依存しすぎるのはよくないとされます。

これに対して、内発的動機は本人の主体性が発揮されるので、粘り強さや創意工夫が現れやすく、これをいかに高めるかが、最近のビジネス界での大きな課題の1つになっています。

3)内発的動機は「引き出せる」か?

外部である他人がどうこうして、動機が高まるのであれば、それは「内発的動機」ではありません。これは言葉の定義の問題です。

では、どうしようもないのか、というとそんなことはありません。

「高める」ではなく「引き出す」という、きわどいニュアンスがポイントです。つまり、直接的な刺激で変化を起こそうとするのではなく、環境を整えることによって、時間をかけて本人の内側から動機が高まりやすくするのです。

4)本当に「引き出し」ているか?

でもこれ、本来あるものを「引き出す」のですから、本人を変えるのではなく、本人に合わせて環境を変えるのが基本です。その境界はグレーゾーンですが、行き過ぎて本人を変える方に傾けば「洗脳」でしょう。

結束力の固い組織に長くいれば、半ば洗脳された状態になることもあるでしょう。それが問題になるかどうかは、次の二つの視点でチェックすることが有効ではないでしょうか。

  • その組織の活動が社会に受け入れられている(もちろんコンプライアンス面でも)
  • その人が、組織外での生活においてとくに問題なく人間関係を持てる

5)理論としての有効性

「内発的動機を引き出す」というきわどい表現自体が、この理論の脆さを教えてくれています。仕事の場での「動機づけ」について、要因のありかを人間の「内部」か「外部」かに分けるのは、あまり意味がないことのように思えます。例えば、犯罪を裁く場では、この違いは重要に思えます。

おそらく、5〜10年後にはビジネス、組織開発の世界で「内発的動機」という言葉は廃れているでしょう。むしろ、これからは、

  • 高い質の動機づけは、どのような要因や環境を組み合わせることによって起こりやすいのか?
  • 仕事の性格に応じて求められる動機づけの「質」はどんなものなのか?
  • 個人の資質や経験などによって、動機づけの要因や環境はどのように変えるべきなのか?

といったことが問われ、実践や理論化が進んでいくのではないでしょうか?

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