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2009年4月12日 (日)

なぜクリーニングの急ぎ仕上げは無料なのか?(笑)

最近よくあるタイプの会計本のタイトルを真似てみました。(^_^)
でも会計よりもマーケティング寄りのお話。厳密な分析ではありませんので、予めご了承ください。


いつも利用するクリーニング店。通常より速い翌日仕上げに追加料金がかからないということを先日知り、「なぜ特急料金をとらないんだろう?」という素朴な疑問が湧きました。

急ぐ人に追加料金を求めれば、収益が増えて、利益を増やせるか、他のサービスや割引キャンペーンの原資に回せるはず。しかし、そうしないからには何か理由がありそうです。


私の想像。

まず、追加料金を求めなければ、急ぎ仕上げの注文が増えて困る可能性がありますが、どうでしょう? 困らない理由は何でしょうか?

店舗型のクリーニングサービスは、仕上がり後に店に行って受け取らなくてはなりません。とりわけ、急ぎ仕上げの場合は、早く仕上がった期間内に受け取りに行かなければ意味がありません。(※1)

したがって、急ぎ仕上げを依頼する人はそんなに多くないと考えられます。現に私自身は「急ぎ」にしたことがありません。ふつうは次の週末に受け取ります。たまに「急ぎ」にする人もいるでしょう。うちの妻がそうです。一方で、毎回のように急ぎ仕上げ、という人もいるはずです。

「毎回急ぎ仕上げ」の人たちを一つ顧客セグメントと考えれば、「追加料金なし」は一つの価格戦略です。「追加料金あり」の他店から客を奪えるメリットの方が大きいかもしれません。

客数増の効果が、「たまに急ぎ仕上げ」の客への追加料金から得られる売上増の効果を上回ればよいわけです。「追加料金なし」は「たまに急ぎ仕上げ」の客の満足度を高めてロイヤリティを高める効果も期待できます。

いずれも、「急ぎ仕上げ」の注文が増えすぎないことが重要な前提条件でしょう。


実際にお店で尋ねてみました。

「どうして追加料金がいらないんですか?」

「遅くてもいいお客さんのを追い越して扱うからです」

的を射ない答えのように聞こえますが、実は本質を衝いていました。

週末だけに来る、遅くてもいいお客が多いので、急ぐお客のを割り込ませることができる、というのです。価格戦略かどうかは確かめませんでしたが、追加料金をとる積極的な理由(コストアップ)がないのは確かです。


そこで気づいたのですが、仕上がり後に早くお客に早く引き取ってもらう方が、店にはメリットがあります。引き取りが遅れるとお店の保管スペースが溢れてしまいます。

現にその店では早く引き取ったら5%割引券をくれます。急ぎ仕上げですぐに引き取れば次回5%引き。追加料金どころか、むしろディスカウント!

つまり、この店の場合、店舗の保管スペースには余裕がないが、工場の処理能力には余裕があるんでしょうね。逆パターンは考えにくいですが、配達型のクリーニングサービスがそれに近いかもしれません。


※1: サービス財は、買い手(受け手)の参加が必要、というセオリーです。クリーニングの場合、直接的なサービスのサービスは衣類なので「保管」が可能ですが、「急ぎ」の場合は、「早く受け取る」ことが買い手に求められます。

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