« 2009年4月 | トップページ | 2009年6月 »

2009年5月

2009年5月31日 (日)

上場企業の経常利益率は2.5%に(09年3月期)

日経新聞に掲載された業績数値から計算すると、2009年3月期決算の金融を除く全産業の売上高経常利益率は2.5%

2008年3月期は5.5%だったので半分以下に低下したことになる。
11月時点の見込みは4.9%だったので、その後の落ち込みが予想より大きかったことが伺われる。(※1)

業種別では、(おそらく輸出や海外需要の打撃が大きい)製造業の値が低く、非製造業が持ちこたえていることがわかる。



【2009年3月期実績】

(連結) 売上高・億円     経常損益・億円  売上高経常利益率
全産業  4,829,301  121,394  2.51%

製造業  2,881,453   35,379  1.23%
非製造業 1,947,848   86,015  4.42%


今期見込みは、製造業、非製造業とも今期に続いて減収減益の見通し。売上高経常利益率は、非製造業がわずかな改善を見込むが、製造業はわずかながらさらなる低下を見込んでいる。

【2010年3月期見込み】
(連結) 売上高・億円     経常損益・億円  売上高経常利益率
全産業  4,283,237  111,220  2.60%

製造業  2,488,189   28,681  1.15%
非製造業 1,795,048   82,538  4.60%


○出所: 日経新聞 2009/05/30付 財務面 「09年3月期 最終集計 上場企業決算 電機・自動車、総崩れ 7期ぶりに減収減益」より
 全産業には、銀行、証券、保険、その他金融を含まない。上場会社の3月本決算会社。新興市場、決算期変更会社、親会社が上場している会社を除く。連結決算を作成しない会社は単独決算を集計に加えてある。
 ただし、経常利益率は筆者が計算した。

※1: 2008年3月期決算実績と2009年3月期決算見込の値は、2008年11月時点の日経新聞の記事を引用した本ブログの過去記事を参照:
http://asao.way-nifty.com/empower_yourself/2008/12/post-6f53.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月30日 (土)

国会議員の「世襲」問題について

国会議員の「世襲」を問題にする議論が続いている。ただ、「世襲議員自体がよくない」というロジックではうまくいかないだろう。


「世襲」を厳密に定義しようとすると、「現職が引退する場合に、三親等以内の親族が、同一選挙区で」というような話になったりするが(※1)、これは規制をするための定義であって、私たちが問題を感じる「世襲」を的確に捉えているとは言えない。


「国会議員になる人が一部の家族の人たちばかりになりつつあることへの懸念」が「世襲」批判を招いているのではないか?


現在の麻生首相は祖父が吉田茂元首相で、前首相の福田氏も父が首相経験者で、その前の安倍首相も父が大臣経験者で、野党の方も民主党代表の鳩山由紀夫氏は祖父が鳩山元首相、とくれば、与野党ともに一部の家系が権力の中枢を握っている、という印象をまぬかれない。

その意味では、衆議院議長の河野洋平氏の息子である自民党の河野太郎議員は、「現職の引退」もなく「同一選挙区」でもないので「世襲」とは言いにくいが、親子で国会議員という点では先の懸念の一因になっているのは間違いない。


個々の「世襲」議員、もしくは元職や現職の国会議員を近しい親族に持つ国会議員が、とりわけ資質に欠けているとか、とりわけ不適格であると主張するには、粗探しをするしかないだろう。

なによりも選挙で選ばれたという事実が大きい。有利な条件があるとはいえ、選挙区の有権者の選択の結果であるのは間違いない。しかし、その集積が、衆議院全体で3割弱、自民党は3割強という状況を招いている。(※2)

とすれば、「一部の家族の人たちばかり」という「集積的な結果」を招かないようにすることが大切だ。世襲制限などの規定は、そうした集積的な結果についての数値目標を持って設定すべきだろう。

とりあえず、今回はここまで。

※1: 国会議員の河野太郎氏はメールマガジン「ごまめの歯ぎしり」(mag2 0000006653)09年4月24日号で、次のように述べている。
例えば、「国政選挙、都道府県議会選挙および首長選挙で、
現職が引退する場合、直近の選挙または補欠選挙では、三親等以内のものは同一選挙区では我が党は公認しない」というルールを自民党が作ってもよいのではないか。
・「三親等」だと甥・姪の配偶者までは入るらしい。
詳しくはドコモの家族割を説明した図がわかりやすい。http://doplaza.at.webry.info/200701/article_11.html

※2:次のサイトを参照:http://anond.hatelabo.jp/20081024092656 (「世襲」の定義が確認できない)
他にもこんなデータが:http://imogayu.blogspot.com/2009/03/blog-post_21.html
(自民党の世襲議員は増えていないらしい)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月26日 (火)

「『チーム脳』のつくり方」


「質問会議」に続く、日本アクションラーニング協会代表 清宮普美代氏の著書、第2弾。

「成果を上げつづけるリーダーの仕事術」という副題にあるように、チームリーダー、チームマネジャーがどうあるべきかをわかりやすく説いています。

要するに「チーム脳」を作り出すリーダーになるにはどうすればよいか、です。具体的には自分の意見を言う「意見リーダー」と、質問を投げかける「質問リーダー」を対比させたりしながら、新しいリーダー像を描きます。

その背景として(本の中の説明とは少し違いますが)、階層型組織のリーダー/マネジャーモデルでは、現在の知識創造型企業の組織運営がうまくいかないという状況があります。

私自身そういう考えの下、チームメンバーの力を引き出すタイプのマネジャーを育成するための研修プログラムの開発に取り組んでいたので、共感できるところが満載。読んだ直後に清宮さんに会う機会があったので、「あの本、すごい良かったですよ~!」と気持ちを込めて伝えました。


誤解のないように付け加えると、「質問会議」手法については直接触れられていません。手法のエッセンス、あるいは背景にある考え方を、チームリーダーの行動に拡大適用したものと言えます。

したがって、私がぜひ尋ねてみたいのは、「質問会議」を体験したことがない人が読んだらどう受け止めるのか? どこまで伝わるのか?
(著者も「わからない」とおっしゃってました。どなたかいらっしゃったら教えてください。)

この点さえクリアになれば、幅広いリーダー層、マネジャー層にぜひお勧めしたいです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「コピー用紙の裏は使うな!」

コスト削減分野の本を探していて見つけた本。タイトルに軽さを感じていたのですが、思いのほかすばらしい!

コスト削減のテクニックに終始せず、現場を巻き込んだ組織マネジメントのあり方まで踏み込んだ奥深い内容です。


コスト削減には「調達改善」「運用改善」「設備改善」の順に取り組みなさい、という基本的な手法から、コスト削減の具体例も挙げてあって、テクニック面でも十分ヒントが得られます。

しかし特筆すべき特徴はもう一つの面、コスト削減に「現場」を巻き込むことで「現場力」を高めることができる、という主張です。具体的には5つの手法(ステップ)を挙げています。

1.「現場」に「経営」やコストを見せる
2.「現場」に徹底して任せる
3.「現場」が自ら効果の検証繰り返せるようにする
4.「現場」におけるコスト削減活動の成果を人事面でも評価する
5.「現場」にコスト削減活動の成果を直接分配する

ちなみに、コスト削減というとマイナスのイメージが付きまといますが、著者は人件費をコスト削減対象に含めません。むしろ、1〜5で現場を巻き込むことで、「現場力」を爆発させることができる、と説きます。

この考え方は、米国で言う「オープンブックマネジメント」と共通しています。まずは身近な「コスト削減」から始めると思えば、「オープンブックマネジメント」の導入のハードルが下がるのではないでしょうか?

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月25日 (月)

「課題」

いまさらここで確認するほどのことではないかもしれませんが、会社によって使い方が違ったりするので、気をつけておきたい用語です。

 

a.課題=取り組みを課された問題

例「解決すべき課題があふれている」

「取り組みを課された」とありますが、もちろん「自ら課す」ものも含まれます。
この場合、「課題」と「問題」はほとんど区別する必要がありません。とはいえ、問題の数だけ課題があると例のようにオーバーフローしてしまうので、数多ある問題の中から重要なものに的を絞って「課題」とするのがよいでしょう。

 

b.課題=目標達成のために実現すべきこと

例)「景気回復が課題」「生産性の向上が課題」

「景気回復が課題」の場合は、例えば「失業率の上昇が問題」で「失業率を○%以下にするという目標」のために「景気回復が課題」となります。

「生産性」のほうは、例えば「○%のコストダウン目標」のために「生産性を◎%向上させることが課題」となります。

「課題=目標」でいけないわけではありませんが、「目標」とは別に設定されるのが、この使われ方の特徴です。1つの大きな目標を達成するために、2つ以上の課題を設定することもよくあります。

また、課題が最初から明らかとは限らないので、設定する過程を「課題抽出」「課題化」などとも言いますね。

「重点課題」という場合、ほぼこの用法だと思われます。

 

c.課題=弱点、苦手としていること(その肯定的表現)

例)「強みと課題を挙げてください」「プレゼンテーション能力が課題です」

「弱み」などと言うよりは、伸ばすべきこと、伸ばしうること、という前向きなニュアンスが加わります。

元々、b.の意味の「プレゼンテーション能力の向上が課題」の省略形だと思われますが、いずれにせよ、必ずしも「目標」が明確でありません。
本来は、目標に即した課題を挙げるべきなのでしょうが、「課題」だけが一人歩きしてしまっている使い方があると感じます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ファシリテーションフォーラム2009(2日目)

午後、私の関わる「なんとなく社会系」グループのセッション。
「えっ!? アンケートにファシリテーション?」というタイトルで、世論調査のアンケートにファシリテーションを活かした手法を体験する内容。(詳細は省きます)

分かれた小グループごとのファシリテーターとは別に、全体のファシリテーターを私が担当したのですが、ちょっと自分としては失敗の部類に入る運営(ファシリテーション)になってしまいました。見た目ではとくに問題なく、参加した方に(目立った)不満を残すこともなく終えたのかれしれませんが、個人的には反省点多数!

研修とはまた違った難しさを感じた面もありますが、研修のようにほぼ自分一人で運営するのと違うので、どこかに気の緩みがあったのかも知れません。

しっかり反省(リフレクション)をして、これからに活かしたいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月24日 (日)

ファシリテーションフォーラム2009(初日)

土日とも、FAJ主催のファシリテーションフォーラム2009に参加。

土曜日午前は、NPO法人であるFAJ自体の総会が同じ会場で開催されたので、初めて出席しました。会社で言うと株主総会ですが、しゃんしゃんというわけでもなく、それなりに質問、意見が出るところが好印象でした。

午後は2時間のセッションを2つ選ぶ形になっており、1つ目は「ファシリテーターのための駿瞬発的論理対応力」に。どちらかというと仕事上の関心から。プロっぽいファシリテーターのミニ研修のような形式。

2つ目は「福祉論! 本当のバリアフリーとは何か?」。障害者雇用について少し関心があるので、ヒントがあるかなぁ?と思って選択。ホーキング青山という先天性の障害をもった車椅子のお笑い芸人がゲストでした。ふだんいわゆる「障害者」と接点がないことが、想像だけで心理的な壁をつくっているなぁと実感しました。

こちらのセッションの参加者数は、1つ目の5分の1たらずでしたが、私としては得たものが大きかったように思います。


今日、日曜日は、「なんとなく社会系」のセッションが実施されます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月22日 (金)

「自責」

「自責」と聞くと、どちらの意味を思い浮かべますか?


a.自分を責めとがめること
b.自らの責任として捉えること


ビジネス界の方であれば、b.が先に浮かぶ人の方が多いのではないでしょうか?

実は広辞苑ではa.の意味しか出ていません。(※1) 用例として「自責の念に駆られる」が挙げられているように、しばしば「〜の念」とワンセットで使われますね。

b.の方の意味は、本ブログの読者にはご存知の方も多いと思いますが、「他責」と対で使われます。「他責」は他人や自分以外の環境・環境変化要因のせいにすることです。自分の責任を回避する方向で物事を解釈したり、報告したり・・・。

そういうのが当たり前になってしまっている組織もあるので、本や研修では「他責ではなく自責」が大切、と強調されます。


では、a.の自責とb.の自責は、まったく関係ないのでしょうか?
あるいは、基本的には同じなのでしょうか?



自分を責めるのは、自分の責任で捉えているのが前提。そこまでは同じ。
しかし、b.の意味では、「過去の行いについて自らを責める」ことを求めません。むしろ「これからどうするか」という将来の行動に焦点を当てます。

細かく言うなら、b.の意味(自責−他責の自責)では、分析として過去のことを扱うけれど、それは将来の自分の行動を導くためのもの。

これに対して、a.の意味(責めるほうの自責)では、過去にしか目が向けられていません。



犯罪を犯したならともかく、仕事上で起こるほとんどの失敗、うまくいかないことについては、a.の意味での「自責」は必要ないように思います。

振り返ることは大切ですが、自分を責めるよりも、これから何ができるかを考えたいものです。(それ以前に、他人のせいにしたり、他人を責めたりしないように気をつけないといけませんね。)


※1:「自分で自分を責めとがめること。『――の念に駆られる』とだけ記載されています。〔シャープの電子辞書搭載の広辞苑(何版か不明、最新版ではない)〕

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月19日 (火)

繰延税金資産(2)

前の記事からの続きです。

これまでに、
繰延税金資産は「前払いした税金」のことで、
1)なぜそれが資産なのか、
2)なぜ税金を前払いするのか、
を見てきました。

最後に残りの
3)なぜ取り崩す必要があるのか、
という点を見ていきましょう。

3)なぜ取り崩す必要があるのか、

2)の説明の例では、翌年度以降も税引前利益が黒字で「税金がかかる」ことを前提にしていました。
ところが、翌年度以降に税引前利益が出ず、税金がかからなければどうでしょう?

「前払いした税金」は、
「(税務会計にもとづいて)今年度納めた税金の一部を、
財務会計の立場で翌年度以降の分とみなした金額」ですから、
翌年度以降赤字になって、そもそも「翌年度以降にかかる税金」がなくなれば、価値がなくなってしまいます。

したがって、しばらく赤字が続きそうな場合には、資産としての価値を認めるわけにいかないので、資産から消します。
「取り崩す」と言いますが、元々払ってしまった税金ですから手元には何も残りません。取り崩した分だけ(税引後)当期純利益が減ります。(※6)

これで、「黒字化が遅れそうなので繰延税金資産を取り崩す」という企業の説明は、「翌年度以降の税金を前払いしたつもりでいたけれど、黒字という前提が崩れたので、その資産価値がなくなったものとします」という趣旨だとわかるでしょう。

※6: 繰延税金資産の減少に対応するのは、《法人税等調整額》の減少。《法人税等調整額》は、法人税等の控除(引き算)項目なので、結局、税引前利益の足し算項目になる。それが減ると当然、税引後の利益が減る。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

繰延税金資産(1)

最近、新聞紙上等で目にする「繰延税金資産」。「黒字化が遅れそうなので取り崩す」といった文脈で使われます(※1)が、正直言ってわかりにくい。
財務諸表の初心者のために簡単に解説を試みます。

繰延税金資産とは、簡単に言うと「前払いした税金」のことです。(※2)

気になるのは、
1)なぜそれが資産なのか?
2)なぜ税金を前払いするのか?
3)なぜ取り崩す必要があるのか?
という点です。それぞれ見ていきましょう。

1)なぜ「資産」なのか?

一般に「前払い」は、費用などが本来かかる(発生する)時期に先立ってお金(キャッシュ)が出ていくことを指します。これを「キャッシュは出ていったけれど、今の時点では本来会社が持っているべき金額だよね」と考えて「その金額の資産がある」ことにします。

2)なぜ税金を前払いするのか?

前提として、財務諸表は「財務会計」のルールで作成され、納税額の計算は「税務会計」のルールで行われる、という違いがあります。ちなみに税務会計では費用のことを「損金」、税引前利益のことを「課税所得」と呼びます(※3)が、以下、分かりやすくどちらも「費用」「税引前利益」と記します。

2つのルールの違いから、ある費用について「財務会計」では今年度に計上したけれど、「税務会計」では翌年度以降にしか計上できないというケースがあります。よくあるのは減価償却を早めるものです。(※4)

すると、費用が増えると、利益が減り、税金も減るので、
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
a)費用計上するタイミングのズレ
▽  (例:財務会計は今年度費用増、税務会計は翌年度以降に費用増)

b)税引前利益が減るタイミングのズレ
▽  (例:財務会計は今年度利益少ない、税務会計は今年度多い)

c)かかる税金が減るタイミングのズレ
   (例:財務会計は今年度税金少ない、税務会計は今年度多い)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ということが起こります。(※5)

c)の例に注目してください。
今年度の税金の額は、財務会計が税務会計より少ないのです。
ところが実際の税金は「税務会計」にもとづいて納めるので、
「財務会計」の立場から「今年度に納めた税金の一部は翌年度以降の分だよね」とみなす、つまり「一部を前払いしている」と捉えるわけです。

長くなったので、続きの
3)なぜ取り崩す必要があるのか?
は次の記事にします。

※1: 繰延税金資産の取り崩しの記事
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/090422/fnc0904222241016-n1.htm

※2: 後述するように、実際に前払いするわけではありません。

※3: 「費用」と「損金」、「税引前利益(税引前当期純利益)」と「課税所得」は、それぞれタイミングのズレを除いても完全に一致するわけではありません。細かい違いはほかにもあります。

※4: よくあるのは「有税償却」と言って、減価償却を税法の規定よりも早く(早い年度に)費用化する場合。

※5: 具体的な計算例のほうがわかりやすい方は、例えばこのサイトが参考になります。http://kessansyo.com/7-10.html


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月18日 (月)

エコポイントの表示は景表法に触れないか?

経済危機対策として5月15日から始まったエコポイント。政策を公表したら予想以上に買い控えが起こったとかで、実施時期を繰り上げた経緯があるようだが、あまりにひどい。

民間企業がこのようなプロモーションを行ったら、景表法(※2)に触れるのではないか?

景表法の不当表示では、ケータイ会社の広告で「優良誤認」が問題にされた例が有名。私は景表法の専門家ではないが、常識的に考えるならば今回のは問題がある。

何に対してどれだけ「エコポイント」が付与されるのかは、はっきりしているようだが、交換対象となる商品が決まっていない。
それだけではない。エコポイントがどんな金額的価値があるのかが示されていない。(※1)
1ポイント1円相当なのか?
1ポイントから使えるのか?
いつまで使えるのか?

交換対象の金額的価値をうたっていないから「優良誤認」でないと主張するかもしれないが、家電量販店では「1ポイント=1円」が常識で、交換対象はほとんどの商品。
そのあたりをあいまいにしたまま「ポイント付与」だけを訴求するのは、「政府」だからと言って甘えが許されるものではない。

公正取引委員会には、政府に対して、せめて牽制球の一つぐらいは投げてもらいたい。

※1: 
・環境省「エコポイントの活用によるグリーン家電普及促進事業の実施について」http://www.env.go.jp/policy/ep_kaden/index.html
この「よくある質問 Q&A(平成21年5月12日現在)」がもっとも詳しいが、交換については具体的でない。http://www.env.go.jp/policy/ep_kaden/faq.html
------------------------------以下、交換に関する質問と回答部分引用
Q10 エコポイントはどのような商品と交換できるのですか。
    A10 エコポイントの交換商品については、[1]省エネ・環境配慮に優れた商品、[2]全国で使える商品券・プリペイドカード(環境配慮型のもの)、[3]地域振興に資するもの、以上の3分野とします。各分野における具体的な商品については、例えば第三者委員会などの透明性のある手続きの下で選定していきます。ページトップへ
Q11 交換商品に応募したいのですが、どのような手続きが必要ですか。
    A11 交換商品については、提供事業者からの応募に基づき、[1]省エネ・環境配慮に優れた商品、[2]全国で使える商品券・プリペイドカード(環境配慮型のもの)、[3]地域振興に資するもの、を中心として選定する予定ですが、具体的な手続き、スケジュール等は決まっておりませんので、詳細が決まり次第公表します。ページトップへ
Q12 エコポイントはいつから、どのように交換するのですか。
    A12 現在、事業の実施者を公募しているところであり、事業の具体的なスキームについては、事業者が決定された後で決まることになります。消費者や販売者の方々に、利便性の高い、使いやすいものにしたいと考えています。ページトップへ
------------------------------以上引用

・総務省「エコポイントの活用によるグリーン家電普及促進事業の実施について 」http://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/12120.html
このページは、消費者にとってまったく役立たない。

・事業者側の表示例:ビックカメラのサイト http://www.biccamera.com/bicbic/servlet/osusume?ID=W419_7

※2: 不当景品類及び不当表示防止法。詳しくは次のサイトを参照「公正取引委員会 景品表示法とは」http://www.jftc.go.jp/keihyo/keihyogaiyo.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

連休明けの忙しさを反省

GW連休明けは仕事が思いのほか立て込みました。ブログの更新もぱったりストップ(汗)(※1)

4月の下旬に「GW明けてから」と言われる案件が増えるだけでなく、明けてから想定外の依頼が来たり、追加の要請が来たりします。もちろん自分でも前倒しにしようと思いながら、先送りしてしまっていることがあります。

「思いのほか」なんて言ってるようではいけませんね。いったい何年仕事をしているんだ!?と叱られそうです。

来年の予定表の4月の欄に
「GW明けは想定外のものも含めて仕事が立て込むので、必ず前倒しで進めて置くように」
とメモを書き入れておきたいと思います。

※1:こちらの記事を参照。 現時点で1週間分余り追いついていない模様・・・。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月11日 (月)

「ペイ・フォワード」

珍しく映画のDVDを観ました。(※1)

「ペイバック」だと「恩返し」、「ペイフォワード」は受けた恩を別の人に送るという意味。

サイトの解説によれば(※2)
「1人の人間が3人の人間に親切をし、さらにそれぞれ親切を受けた者が3人に親切をしていくというもの」。

社会科の課題に出された“自分の手で世界を変える方法”に対して、主人公の少年が考え出したのがこの“ペイ・フォワード”計画。

すばらしいアイデアではあるが、かつて誰も考えつかなかったようなものでもない。それが広がっていないのはなぜでしょうか?

おそらく、映画で少年が語っていたように、勇気が足りないから。
そして、多くの人が自分の手で世界を変えられると信じていない、あるいは変えたいと心から願っていないから。それとも?

できない理由を探すことはありません。できることを考えましょう。

私は「ペイ・フォワード計画」に、明文化されていない良いしかけが2つあると思いました。

1つは、親切をした相手に「別の人に送るように伝える」こと。
もう1つは、少年のおばあさんから後のつながりがそうだったのですが、受けた恩「見知らぬ他人」に送ること。

「親切」は簡単で小さなことでもかまわないし(※3)、3人でなくても2人でもかまわないでしょう。その代わり、日常的にちょっとした感謝の気持ちをこまめに他人に送る。

そうした小さな「ペイ・フォワード」の積み重ねは、やがて社会を循環し始めるはずです。

私はこの作品を知り合いのコンサルタントの方に勧められました。
感謝の気持ちを込めて、本ブログをご覧になっている方にこの作品をお勧めします。

※1:  ペイ・フォワード[可能の王国]、原題 Pay It Forward、2000年、米国、ワーナー・ブラザース

※2: gooサイト http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD32433/

※3: 映画では「親切」は簡単なことではいけないとされています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月10日 (日)

サトーの経営体制

「不屈の理念企業 逆風はね返す身の丈改革」を特集した4月20日号の日経ビジネスにサトーという会社が紹介されています。(※1、2)
その経営体制が、1つの「オープンな組織&エンパワーされた社員」のあり方を示しています。

1)12名の取締役のうち、過半を占める7名(うち5名が社外取締役)は、執行役員会のメンバーでない。(※3) 取締役会議長は輪番制で、取締役に序列がない。

2)執行役員会のメンバーによる経営会議には、現場から推薦された社員が出席する。その内容はイントラネットで公開される。

1)のうち、経営と執行の分離は最近ではよくありますが、議長の輪番制というは聞いたことがありません。

2)は時々見かけます。もっと踏み込んで経営会議の傍聴が自由にできる、というケースもあります。

これだけなら、それほど特殊とは言えないかもしれません。大きなポイントは、記事の中心になっている「三行提報」という制度です。これが「エンパワーされた社員」づくりに役立っています。

「3行127字の範囲で、身の回りで気づいたことや、その改善案を社内システムに打ち込んで提出する。ミソは全社員が1日たりとも欠かさず出さなければならないこと。サボれば昇進の道は断たれる。1日当たりの提出件数は約1900件(海外分も含む)で、あて先はすべて経営トップである。トップは50件前後までふるいに掛けられた中から、目を引いた提案に対してコメントを添えて返信。現場はすぐさま実行に移す。」

当然、些細な内容がほとんどになりますが、全社員が1日1件を課されることで、現場を観察し、疑問を持ち、改善策を練ることになるのです。そうすることで、経営に参加する意識と、考える癖がつくのだと思います。

ちなみに同社はコンサルティング会社を出入り禁止にしているそうです。外部の人に指摘されるような問題は、社員がすでに気づいているからだと言います。

※1: 日経ビジネス 2009/04/20号 p.28−30 特集内「身の丈測り、強さ生む サトー3行の提案が会社を動かす」

※2: 株式会社サトーのサイト http://www.sato.co.jp/
 従業員 連結:3,541名、単体:1,309名
 売上高 連結:877億円、単体:607億円(2007年度)

※3: 記事には「社外取締役が過半を占める」とされていますが、p.29の図によれば、社外取締役は5名、社内取締役が4名のほかに、代表取締役が3名います。会社サイトでもそのようになっています。したがって、上に記したように「執行役員でない取締役が過半を占める」が適切です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

スウェーデン サムハル社

少し前の日経ビジネス(※1)で紹介されてたのを見て、少なからぬ衝撃を受けました。先に書いた「日本でいちばん大切にしたい会社」を読むきっかけになったのも、そのせいです。


サムハル(ストックホルム、スウェーデン)

・1980年設立
・収入868億円(2007年度)
・ROE(自己資本利益率)9%
・自己資本比率38%
・従業員数2万2千人
  ・・・うち90%は何らかの障害を持つ

つまり「障害者が働く障害者のための企業」なのです。
もう少し詳しく。

・スウェーデン政府国営(株式の100%を保有)
・収入のうち506億円(58%)が政府の補助金


ただし、

・年間1000人を一般労働市場に転職させている。2007年度は5.7%
 (従業員の5%以上を毎年転職させるよう政府から要求されている)

・知的障害や複合的な障害がある人(優先カテゴリー)の新規採用率51%
 (40%以上を政府から義務付けられている)

・従業員全体の労働時間2440万時間
 (2400万時間以上=1人当たり換算で年間約1200時間=を確保するよう政府から求められている)


という厳しい条件がついています。
このサムハルの生みの親とされるのが、ゲハルト・ラーソン氏。1976年に28歳という歴代最年少の若さで保健社会省の事務次官に就任。サムハルの設立を推進し、決まると次官を辞任して組織を作り始めたといいます。

記事では本人にインタビューしており、サムハルのねらいが2つあったという答えを引き出しています。

1・人間的な理由: 障害者を施設に隔離するのではなく社会の一員にするしくみとして、障害者の仕事を生み出す組織を作る

2・経済的な合理性: 障害者に障害年金をただ支給するだけよりも、障害者が働いて、納税するほうが社会全体のコストが下がる

弊社は「働くことの意義を高める」ことを経営理念としていますが、それがうそっぽく感じられて恥ずかしくなりました。本気で理念とするなら、足元をきちんと見つめなくてはならないと感じています。


※1: 日経ビジネス 2009年3月30日号 pp.154-159 リポート「弱者を見捨てない経営 “障害者集団”、スウェーデン・サムハルの驚愕」
業績等の数字は、とくに明記がない場合は2007年度、金額は1クローナ=11.89円換算されている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月 7日 (木)

債務残高GDP比168%の受け止め方

政府長期債務残高が増えているという話は、GDP比での大きさよりも、拡大に依存した財政・経済の体質を問題にしなくてはならない。



4月30日に財務省が公表した見通しによると、国と地方を合わせた長期債務残高の対GDP比率が2009年度末に168.5%になるという。(※1)

政府の借金が「GDPの1.7倍」という数字がどれほど深刻かについてはよく論じられているが、政府が破綻するか否かの基準の線引きが難しく、簡単に決着がつかない。


むしろ注目すべきは、その増加ペース

1992年度末には、301兆円、GDP比62.2%だったものが、
17年後の2009年度末には、816兆円、GDP比168.5%になる。(※2,3)

つまり、過去17年間の平均で年30兆円ずつ借金を増やしている

30兆円は、GDPの約6%に相当する。
(この間の名目GDP成長率は年0.5%)(※4)

30兆円は、国と地方の政府歳出規模の20%に相当する。
つまり、政府支出の2割が毎年「新たな借金」で賄われている。(※5)


この借金拡大体質、政府の体質だけでなく、日本経済の体質、それを容認してしまう日本政治、国民の体質こそ問題にされなくてはならない。

国民の側で言うと、私たち自身がこの借金依存財政・経済の現実と向き合って、体質変革の覚悟を決めなくてはならない

メタボのレッテルを貼られたおじさんたちだって、努力してるじゃないか!
病気で倒れるまで生活を変えない、というのは許されないだろう。



※1: 2009/05/01付 日経新聞 経済2面 「債務残高 GDP比168%に 財務省見通し
今年度、補正など反映」による。記事によれば、今年度補正予算案や政府経済見通しの下方修正を反映した数字だと言う。
●ネット記事はこちら:http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090430AT3S3001M30042009.html
●反映前の数字はこちら(財務省サイト,PDF):http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/siryou/sy2104g.pdf
(09年度末見通しで、804兆円、157.5%になっている)

※2: 1992年度末の値はこちら(財務省サイト,PDF):http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/siryou/sy1403h.pdf
2009年度末の値は、※1の記事より

※3: 国の一般会計歳出と税収のギャップが広がったのは90年代前半からであることが、次のチャートからよくわかる。(財務省サイト)http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014b.htm

※4: GDPを平均500兆円とした。成長率0.5%は各年度の値の単純平均。
1993年度(平成5年度)から2008年度(平成20年度)までのGDPと成長率はこちらを参照。(財務省サイト,エクセル)www.mof.go.jp/kankou/hyou/g673/673_01.xls

※5: この17年間の平均で、国の一般会計が80兆円強、地方の普通会計が90兆円余り、合計(純額)が150兆円弱。30兆円は150兆円の20%に相当する。データはこちらを参照(※4と同じ。財務省サイト,エクセル)www.mof.go.jp/kankou/hyou/g673/673_01.xls

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月 5日 (火)

インフル: 弱毒と強毒

豚インフルエンザがパンデミックの一歩手前まで来て、心配が広がっています。しかし、人類が真に警戒すべきは「強毒型の鳥インフルエンザ」だと言われます。

素人には弱毒と強毒の違いがニュアンス以外によくわかりませんでしたが、昨日の日経新聞を見て衝撃を受けました。(※1)

今回と同じ「H1N1型」(弱毒性)の「スペインかぜ」は、全世界で2000万人〜4000万人が死亡したとされています。(※2)
しかし、その「発症者に占める死亡率」は「2%」。

他方、鳥インフルエンザウイルスの「H5N1」(強毒性)は、なんと「60%」!
ただし、感染力は「弱い」とされています。

ということは、対策のしかたを劇的に変えるべきではないでしょうか?

つまり、弱毒型であれば、感染・発症はしても重症化しないように手を打つ。
強毒型は、とにかく感染拡大を防ぐ。

いや、素人の判断に頼ってはいけないので、引き続き最新情報に注意しましょう。

※1: 日経新聞 2009/05/04付 朝刊 科学面 「ウイルスの正体に迫る 新型インフル解明本格化 遺伝子4種が混合」

掲載されていた表をそのまま引用します。
−(以下引用)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
          主なインフルエンザウイルスの比較

       感染力  発症者に占める死亡率  人での流行の持続性
――――――――――――――――――――――――――――――――
新型ウイルス  不明     不明        不明
(H1N1型) (強い?)    (低い?)
――――――――――――――――――――――――――――――――
スペインかぜ(1918年)
ウイルス    強い     2%       約40年流行
(H1N1型)
――――――――――――――――――――――――――――――――
アジアかぜ(57年)
ウイルス    強い     0.5%     約10年流行
(H2N2型)
――――――――――――――――――――――――――――――――
香港かぜ(68年)
ウイルス    強い   0.2―0.3%   約40年流行
(H3N2型)
――――――――――――――――――――――――――――――――
鳥ウイルス   弱い     60%        −
(H5N1型)
――――――――――――――――――――――――――――――――
(注)季節性のA香港型(H3N2型)は香港かぜ、Aソ連型
(H1N1型)はスペインかぜの遺伝子を引き継いでいる
−(以上引用)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

※2: 東京都健康安全研究センターの「日本におけるスペインかぜの精密分析」のページ
http://www.tokyo-eiken.go.jp/SAGE/SAGE2005/sage.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「日本でいちばん大切にしたい会社」

もう読まれた方も多いのではないでしょうか?
話題の本。初めて書名を知ったのはほぼ1年前。最近になってメディアで目にすることが増え、ちょっとしたきっかけで買いました。(※1)

涙が出ます。

ポロポロではありませんが、電車の中で何度かうるうるしてしまいました。
「泣ける」とは言いたくありません。経営に携わる者として、それでは済まされないように感じます。

著者が「日本でいちばん大切にしたい会社」を主に5社紹介しているのですが、そのあり方、成功のしかたが、いわゆるオーソドックスなビジネスのセオリー、ロジックと違っているのです。カタカナを羅列しましたが、私たちが教科書的に教わることの多い、欧米発の経営理論、経営思想と呼ぶべきかもしれません。

紹介されている会社に共通しているのは「人」を大切にしている点でしょう。

自戒を込めて言うなら、これまで主流のビジネス、企業経営の考え方は、カネやモノの視点に偏っており、ヒト、とりわけその気持ちや幸福感、さらに社会についての視点が弱かったと認めなくてはなりません。

それほどオルタナティブ(代替的)なモデルを提示しているように思えます。

この本を読んでそこまで大きな話に広げるか?と思う人もいるかもしれません。感じ方は読む人次第。ぜひご一読を。

※1: 坂本光司、日本でいちばん大切にしたい会社、2008/04、あさ出版
ちなみに、昨年の4/1に第1刷、私が買ったのは2009/04/13の第37刷、つまり1年間、月平均3回ぐらいの増刷!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月 4日 (月)

原因分析をするべきか、避けるべきか?

質問会議のアプローチと問題解決のアプローチ

ここのところ続けて、問題解決・ロジカルシンキングの案件のご相談をいただいています。

いわゆる問題解決のアプローチでは、原因分析(真因分析とも言う)のプロセスなしに、解決策に進むことはありません。

他方、質問会議(アクションラーニングのセッション)手法(※1)では、原因分析のプロセスはありません。むしろ避けます。しかし、問題解決の手法であるのは確かです。

この違いをどのように受け止めればよいでしょうか?

(先取りすると、仮説はあるものの断定的な結論はありません。)

単に「アプローチの違い」と言ってしまえば簡単です。やや乱暴に言えば、好みの問題だと。

それに質問会議はチームでの話し合いが必要なのに対して、いわゆる問題解決は個人でも可能です。そうした違いに応じて使い分ければ良いとも言えます。

しかし、質問会議以外にも原因分析をしないタイプのアプローチはあります。問題はこの違いをどう解釈し、使い分ければよいか、です。(※2)


確証はありませんが、質問会議に適した問題が「複雑な問題」であることを手がかりに、仮説を展開してみましょう。

(原因分析「あり」型に適した問題)
原因を分析できるような問題、というのは、複雑ではあっても複雑さを解きほぐすことができるような問題です。つまり、何層ものツリー図やフィッシュボーン図で表しうる問題。

おそらく、生産の現場のような物理的な問題や、人の問題であっても組織内のクローズドな環境における問題、あるいはお客様に関わるものでも、数が多かったり繰り返し起こったりしてパターンで捉えることができるような問題ではないかと思います。

(原因分析「なし」型に適した問題)
一方で、原因が分析しにくい問題は、複雑さをシンプルに分解することができない問題。ループ関係、相互依存関係、相乗関係があったりして、紙の上に表そうとしても矢印が絡み合ってしまうような問題でしょう。

オープンな環境で様々な外部要因に影響される問題、関係者が多い問題、複数の人の心理面が絡む問題、繰り返しがあまりなく個別性の強い問題、などが特徴と言うべきでしょうか。


実際には、どちらのアプローチでもうまくいくケースが多々あると思います。ビジネスに携わる個人としては、まず原因分析型のアプローチをマスターし、そのうえで原因分析をしないタイプのアプローチを身に付けるとよいと思います。


※1: 質問会議(アクションラーニングのセッション)手法については、こちらのページをご覧ください。
http://www.openpower.jp/2009/03/post-d279.html

※2: ちなみに私自身は原因分析不要派です。分析は得意な方だと思いますが、人に説明したりする必要がなければ原因分析にはこだわりません。この文章は原因分析「あり」型ですね。(^^)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

いい話し合いができたと感じる会合

最近、日本ファシリテーション協会の「非公式」グループである「なんとなく社会系」の会合に続けて参加しています。今月の下旬に催される協会のイベントに、一分科会として出展することになったためです。(※1,2)

当然、いろいろと決めることがあるのですが、「とてもいい話し合いだった」と感じる会合が続いています。

分科会では、
1)ある社会的なテーマについての世論調査のようなアンケートを行い、
2)そのあとで数名のグループでテーマについて話し合い、
3)再度、同じ内容のアンケートを行う
という、実験的な試みをします。(※3)

これまでの会合では、どんなテーマを取り上げるか、アンケートの質問項目をどうするか、2)の話し合いの進め方をどうするか、などについてじっくり検討してきました。

そのたびに結論がまとまらず、あーだこーだと模索して行き詰まりかけるのですが、あるところからさぁーっと拓けて、いい結論が見つかるのです。

途中の段階では意見が割れていたり、どちらも決め手に欠けていたり、思いをうまく形にできなかったりするのですが、最終的には全員が納得する答えに辿り着く。なんとも不思議で心地よい感覚です。


ここの会合にはいくつかの特徴があります。

a)出席メンバー数は多くても10人を超えることがない(比較的少人数)
b)大部分が男性(女性比率は1、2割)
c)全員がファシリテーション協会の会員
d)はっきりしたファシリテーターを置かないことが多い(板書、書記役はいる)
e)聞く姿勢と発言・主張のバランスが良い
g)進行手順をとくに定めない
f)割と時間がかかる(時間をかける)

b)の男性比率の高さが関係あるかどうかは疑問ですが、そのほかの特徴はすべて「いい話し合い」の要素になっていると思われます。

とくにe)の聞く姿勢と発言・主張のバランスの良さは大事だと感じます。

時間がかかるのはある意味短所とも言えます。それでも、みんな自発的な意思で参加しているので、納得感とか合意に至る達成感のようなものを大切にしているように思えます。私が「とてもいい話し合いだった」と感じるのも、一種のブレイクスルーが起こってそこに辿り着くからではないかと思っています。

こうした話し合いがもっとどこでもいつでもできるように、話し合いのしかたを工夫していきたいですね。


※1: 日本ファシリテーション協会 ファシリテーション・フォーラム2009の「なんとなく社会系」グループのページ
「https://www.faj.or.jp/modules/contents/index.php?content_id=771
ファシリテーション・フォーラム2009は、5/23,24の両日、東京で開催されます。

※2: 「なんとなく社会系」についての本ブログ過去の記事
http://asao.way-nifty.com/empower_yourself/2008/07/post_8909.html

※3: ※1のページを参照。ここでは内容の詳細や狙いは割愛します。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2009年4月 | トップページ | 2009年6月 »