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2009年7月

2009年7月31日 (金)

コストダウンの次は回転率アップ

6割経済と言われるほどの急激な景気後退も、やや持ち直したようです。しかし、L字ともW字とも言われるように、今回の景気の見通しは油断できません。

すでに昨年9月のリーマンショックから1年近く経ちます。この間、企業では厳しいコストダウン努力が進められました。


利益=売上−費用 ですから、売上の減少に対して、費用を抑制するコストダウンは、最もわかりやすく、かつ強力な対策です。

では、コストダウンが一巡も二巡もした今、何に取り組めばよいのでしょうか?

私は、「回転率」を高めることをお勧めします。

上場企業は、ROAなどの資本効率を求められるので、すでに多くのところで取り組まれていると思います。しかし、そうでない会社にとっては、意外に盲点ではないでしょうか?


1. 回転率を高めると?

「回転率」は、いわば資産などの活用効率です。

例えば、「在庫回転率」は 売上高 を 在庫金額 で割って求められます。会社が仕入れたり製造したりした在庫が、どれだけ大きな売上に結びついたか、を捉える指標です。

当然、「少ない在庫で、より大きな売上」
に結びつく方がよいのです。裏返せば、在庫回転率からは、「売上が1割減少したなら、在庫の金額も1割減らすべきだ」、と言えるのです。

仕入単価や製造単価を 1%でも下げる、という努力はしているでしょう。ところが、在庫の金額――正確には〔単価×数量〕のうちの数量ですが――を売上高の水準に合わせて減らす、ということを、どれだけの企業が徹底できているでしょうか?

在庫を減らせば 資金 に余裕が生まれます。売れ行きの悪い商品の在庫を減らして、売れている商品や新商品の在庫を増やせば、販売機会が広がり、売上が伸びる可能性が高まります。

また、余った資金を借入金の削減に回せば、わずかでも金利負担を軽くできます。


2.回転率アップの応用

回転率という考え方は、もちろん在庫に限りません。工場や店舗の設備などにも適用します。生み出すものが直接的に売上や販売数量でない場合は「稼働率」と読み替えた方がわかりやすいでしょう。

例えば、オフィスのプリンタに当てはめてみましょう。

1つのオフィス内に、3台以上のプリンタがあるケースを想定しましょう。どれもフル稼働で混み合っているわけでなければ、2台に減らすことで稼働率を高めることができます。(1台にしてしまうのは、故障等のリスクがあるので必ずしもお勧めしません。)

もちろん、これだけでは何もメリットはありません。

しかし、プリンタが複数台ある場合、いくつかの機種が混じっていることが多いですね。機種に応じて、トナーカートリッジも型番が違ったりします。そして、それぞれに補充のためのストックが購入されているのではないでしょうか?

プリンタ台数(機種数)を減らせば、カートリッジの補充ストックの購入量、したがってそのコスト、を減らすことができます。トナー使用量が減るわけではありませんが、オフィスの棚に眠っているトナーの量を減らせるのです。

(プリンタの稼働率をスキップして、単純にトナーの在庫量を減らして回転率を上げる、と考えてもいいでしょう。トナーに限らず、オフィス用品のストック量は、個人の引き出しにあるものも含めれば、かなりのボリュームになるものです。)


3.コストダウンから回転率アップへ

プリンタ&トナーは一例ですが、回転率・稼働率を高めるという発想を、設備・機器、スペース、人員に適用してみるとよいでしょう。

コストダウンは後ろ向きのイメージがありますが、回転率・稼働率アップは、前向きな面もあるのが利点です。在庫などの分母側を小さくするだけでなく、売上や生産物などの分子側を大きくする方向でも考えられるからです。コストダウンの次の段階としてお勧めする理由でもあります。

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2009年7月28日 (火)

「努力不足」は「不足」だけでなく「努力」の中身に目を向けよう

うまくいかないときは、自分に努力不足の点がないか振り返るべきです。このとき大切なのは、「不足」だけでなく「努力」の中身に注目することです。


先週の土曜日、珍しく朝日新聞の土曜版を見て、勝間和代さんのコラムを発見。
「勝間和代の人生を変えるコトバ 『努力不足が被害者意識を生む』」

要約するとこんな感じです。

私たちは、うまくいかないときに努力不足を棚に上げて、他人や環境に責任転嫁をして被害者意識を抱きがちだ。そうならないように、努力不足の点がないか冷静に振り返ってほしい。
(⇒詳しくは記事末参照)

いや、もっともです。
今をときめく勝間さんに反論などするつもりはありません。
「責任転嫁」は自分に何も変化を生み出さない。同意します。
ただ、ちょっとだけ付け加えたい。


「努力不足」という一言にまとめてしまうと、うまくいっていない人にはピンと来ない。

「こんなに努力しているのに」 うまくいかない
「苦労して一生懸命やってきたのに」 うまくいかない
「去年の1.5倍やっているのに」 成果が上がらない
「他人の2倍は働いているのに」 結果がついてこない

ということはいくらでもあります。
この人たちが、「自分の努力不足だから、もっと努力の量を増やす」という行動をとっても、結果は変わらないことが多いのです。

一方で無理をし過ぎて身体を壊してしまう人もいます。「努力不足」という言葉が人を追い詰めてしまうのが心配です。

おそらく勝間さんの言う「努力不足」には、「努力の中身が合ってない」ことが含まれます。(きっと彼女には当たり前。だから成功する。)
つまり、
・努力の方向、対象を変える、
・努力の方法を変える、
・成果に結びつけるためのワンステップや一工夫を加える、
といったことが求められているのです。

いい意味で、他人の力を借りる、というのも含んでよいでしょう。


環境の変化が激しいので、これまでのやり方が通用しなくなっています。そんなとき、努力の量的な積み増しは効果を生みません。質的に努力の中身を変える「努力」をしましょう。それが、自分の努力不足の点を振り返る、ということなのです。

(参考記事)
朝日新聞 2009/07/25付b9面(土曜版)
勝間和代の人生を変えるコトバ 「努力不足が被害者意識を生む」

記事内容
1)冒頭部: タイトルの説明
知り合いの経営者から教えられたという「努力不足の四段活用」
①努力不足→②責任転嫁→③被害者意識の醸成→④加害者への転嫁

2)文末部(引用)
どうしても私たちは、何かがうまくいかないときや困ったときに、自分の努力不足や能力不足を棚に上げて、外部環境が自分たちを不幸にしているという被害者意識をついつい醸成して自分のプライドを守ろうとしがちです。
そんな落とし穴に陥らないためにも、自分が努力不足に陥っていないか、常に冷静に見つめられる目を養わなければならないのです。

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細田氏の「国民の程度」発言に学ぶ

先週末、自民党幹事長の細田氏の、「国民の程度かもしれない」という発言が話題を呼びました。
さっそく撤回されたものの、毎度のごとく批判の的になっています。※1

実はこれ、政治問題ではありません。ビジネスに携わる私たちも、よく同じような失敗をします。

国政の程度が低いのは国民の程度が低いからだ――政治家や官僚にかぎらずとも、本音ではこのような認識を持っている人は多いでしょう。(読者の中にもいらっしゃるかもしれません。)※2

では、なぜ批判されるのか? なぜ批判される「べき」なのでしょう?


「国政のレベルが低いのは国民のレベルが低いからだ」という見方が、客観的分析として必ずしも誤っているとは思いません。厳密に実証するのは難しいですが、選挙での投票率の低さなどからすると否定しにくいのも事実です。

ところが、細田氏の発言は、自民党が選挙で負けそうなタイミングで出たもの。選挙で勝った直後に、同じことを言うでしょうか?
国民の程度、レベルが前回総選挙から大きく低下したとは思えません。

つまり、責任転嫁、典型的な「他責」の発言です。

自分たちの政権運営がうまくいかなくなったのは国民のせいだ、と言っているに等しいので批判されるのです。

ビジネスでも、売上が伸びなかったり、顧客のアポがとれなかったりしたときに、ついつい、「景気が悪いからだ」とか、「お客さんが興味をもってくれない」などと言ってしまったりします。私もそういうときがあります。

しかし、景気の悪さなどが客観的事実だとしても、私たちはその環境のもとで成果を出すことが求められています。それを自分自身、自分たちの責任として受け入れる姿勢がなくては進歩がありません。

政治家もそれは同じ。だから批判に値するのです。
でも私たちは他人の批判をするよりも、学ぶべきでしょうね。


※1: ニュース記事 http://sankei.jp.msn.com/politics/election/090725/elc0907250020000-n1.htm
(記事にあるように、発言はさっそく撤回されている)

※2: 細田氏は「国民の程度が低い」とまでは言っていません。

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2009年7月24日 (金)

画期的な英語学習法

「画期的な英語学習法」というと、マユツバものに聴こえるかもしれません。しかし、本当に革新的な商品というのは、最初は受け入れられなかったりするものです。それを広く市場に受け入れられるようにするのが起業家の仕事なのだと思います。

先日、その「画期的な英語学習法」を事業化するご相談をいただきました。正直言って、まだ100%信用できていません。もちろん、ニセモノというわけではなく、「どれぐらい画期的なのか?」をつかめないでいるだけです。


例えば電気自動車は、ガソリンエンジンの自動車を常識とするなら、画期的です。クルマの外観や運転のしかたなどは大して違わなくても、クルマを動かすしくみは全然違う。ガソリンが電気に、エンジンがモーターに置き代わるだけでなく、車輪1つずつにモーターが付いて動かすタイプであれば、車体構造から違ってくる。

でもそれが、消費者にとって画期的かどうかは別。学習方法が画期的であるだけでは不十分で、学習効率が劇的に向上したり、発音が劇的に良くなったりしなければ、商品として評価されにくい。

ブランド力がなければなおさら。ベンチャー企業がハイブリッド車を発売したとしても、プリウスやインサイトのようには売れない。

つまり技術的な革新性は、商品として革新性と成功を保証しないということ。この転換をしかけていくことが起業家に求められるのです。


この案件、まだ正式にお手伝いするとは決まっていませんが、英語教育業界に革命をもたらすことになるでしょうか?

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役員への報告の効果

弊社は3ヶ月に1度、役員会を開催しています。それ自体も貴重な機会ですが、実はその前に行う「四半期報告」の作成が、私にとっていい効果を生んでいます。

弊社は6月が決算月なので、先週、新年度最初の役員会を行いました。役員会といっても、弊社には正式な取締役会はないので、非公式なものです。

役員は、社外取締役1名、会計参与1名に、代表取締役の私を加えた3名。社外の2人の目を通して、経営についての助言を受ける貴重な機会です。

役員会に先立って、直近四半期の業績をメールで報告しています。これが、とてもいい振り返りになるのです。過去3ヶ月を振り返って、重要なことは何か、今後の課題は何か、を整理します。

会社勤めをしていれば日常的なことなのですが、事業主・経営者になるとそういう機会が減ってしまいます。意識的に作らなければゼロという方もいるでしょう。

社外へのプレゼンテーションと違って、良い面、悪い面ともバランス良く報告できるので、本当に目を向けるべき課題を俎上にあげることができます。こちらが率直・真剣になれば、役員も率直・真剣にフィードバックを返してくれます。

このしくみは、昨年度の社名変更と株式会社化のタイミングに合わせて始めたものです。きっと、今年度中に、その効果が見え始めるでしょう。

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2009年7月22日 (水)

「対話流」

日本アクションラーニング協会の代表、清宮さんの新著。

フィンランドの教育に詳しいという北川達夫氏との共著だそうです。最近、清宮さんは著書を連発されています。

私も今日手に入れたばかりで、まだ読んでいません。

ちなみに清宮さんによれば、タイトルの「流」は流派、スタイルの意味ではなく、対話の「流れ」を表しているのだとか。


帯に

「闘うコミュニケーション」はもう古い。

というコピー。

確かに世紀の変わるころから、望ましいコミュニケーションのあり方、というものが大きく変わりつつあるのを感じます。


研修でも、「討議」や「ディスカッション」という表現が減っていくものと思われます。

続きを読む "「対話流」"

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2009年7月21日 (火)

「アイバンラーメン」

金曜日の夜、各停しか止まらない芦花公園駅で電車を降りて、アイバンラーメンに向かいました。
http://www.ivanramen.com/

ニューヨーク出身のアイバン・オーキンさんが始めたラーメン屋さん。
自家製麺、スープが売り物。
でもやっぱり、アメリカ人がやっているラーメン屋さん、というのが一番の売り物になっていると思う。
私自身、そうでなければ、わざわざ足を伸ばさない。

Photo_4
写真はサラダつけ麺。(正確なメニュー名はちょっと違うかも)
見た目がきれいだったので思わず写真をとる。パスタみたいだ。
基本はオーソドックスなつけ麺だが、アレンジ物なので、サラダとの組み合わせは好き嫌いがあるだろう。
(私はトッピングの白髪ねぎをつけ汁に入れ、サラダにはドレッシングがかかっているのでそのまま食べました。パスタ感覚ならOK。つけ麺だと思うと違和感が残る。)

ちなみに、ラーメン1杯800円~1000円前後。カウンターだけの店で、この立地では、高い。
それでも行列ができる。(ちなみに私は2度目だけれど、幸運なことに今回も並ばずに入れた)
マスメディアに取り上げられたせいもあるが、それだけでさびれた商店街の一角にある店に行列は続かない。

彼が本を出していて、私はそれを読んで初めて店に入った。それまで「アイバン」が人名だということも知らず、何回か通り過ぎて人が並んでいるのを目にしたことはあったけれど。


今回、サラダつけ麺を注文して改めて感じたのは、この店はラーメンを一つの「料理」として出しているということ。
一般のラーメンだって料理にはちがいないが、ラーメンは「料理」というほど特別なものではない。しかし、外国人であり、一流の料理人であるというアイバン・オーキンさんによって、ラーメンは「料理」として捉えられ、作り変えられた。

大した違いはないのかもしれないが、そのように思わせる物語性が、この店の人気の背景にあるのだろう。

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ロジックツリーがわかりやすいわけではない

新聞や雑誌で見るチャートは、ひと目でわかりやすく伝えることを目的としています。これに対してロジックツリーは、ロジカル、MECE(モレなく、ダブりなく)であっても、わかりやすいとは限りません。

では私たちは、何のためにロジックツリーを描くのでしょう?

下のチャートは、5月のGW明けに新型インフルの感染者が出たときの朝日新聞の記事で用いられたものです。デザインをそのまま再現したものではありませんが、構造は同じです。
一面に掲載されていたので、ご記憶の方もいらっしゃるのでは?

Photo

コンパクトに知りたい情報が集約されたチャートです。しかし、ロジカル、MECEな構造ではありません。中央列の上から3つ目のブロック(日本に入国 163人)あたりがとくに混乱します。

これをロジックツリーに描き直すとどうなるでしょう?

(先に自分で描いてみたい方は、スクロールをちょっと待って!)

ロジックツリーの描き方は1つではありません。
ここでは感染等の状況を中心に組み立てることにして、さらに乗客・乗員の区別や人数表記を省略します。ただし、現在(記事時点)の状況は明示することにします。

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 ↓

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 ↓

 ↓

 ↓

 ↓

 ↓

Photo_2

ロジックツリーにすると何が得られるでしょう?

  • メリット: 分類基準を意識できるので、ヌケモレを発見しやすく、あいまいな点がクリアになる。
    最初のチャートで「4人(調査中)」となって いたものが、感染状況も行先も不明であること、また「乗り継ぎで海外へ 177人」が「非接触者」らしいことが浮かび上がる。
  • デメリット: 知りたいことに対して、余分な情報が多くなりやすい。

元の新聞記事のチャートは、国内への入国者と隔離・足止めの状況と、その人たちの感染・接触状況を知らせようとしているので、国外に乗り継いだ人や「不明」な人については、最小限の表記にとどまっています。

裏返せば、ロジックツリーによって、強調されていない部分のあいまいな点や、情報のヌケモレが浮かび上がるのです。

「メッセージ」としての「わかりやすさ」が犠牲になる代わりに、別の意味での「わかりやすさ」が得られるのです。

プレゼンテーションのツールというよりは、その前の情報収集・思考・分析のツールとして位置づけるべきでしょう。


(ロジックツリー作例の補足説明)

一階層目の「感染」/「未感染」の前に、「感染状況判明」/「不明」を加えるといっそうロジカルですが、そこまでやっていません。

逆に、「未感染」の次の階層の「接触」/「非接触」は、次の階層と一括して、「濃厚接触」/「非濃厚接触」/「非接触」の3つに分けるだけでも十分です。そのあたりは、好みでOKでしょう。

 

<p><p><p><p>スライド 2</p></p></p></p>
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2009年7月14日 (火)

早めの「梅雨明け」

気象庁が関東地方の梅雨明けを発表しました。いよいよ夏ですね。今週は暑いからビールも売れそうです。


政府による景気判断が政治的・経済的アナウンス効果を持つのと同じように、「梅雨明け」は、経済的・社会的アナウンス効果を持っている。

私たちは「梅雨明け」発表を聞くと、夏本番の到来を感じ、ビールを飲んだり、遊びに出かけたりしたくなる。個人の心理的なものだけでなく、梅雨が明けたという共通認識が、夏らしく振舞う安心感の源になっているのかもしれない。

 ◇  ◇  ◇

いつの頃からか、気象庁の梅雨明けは断定でなくなった。今回もそうだが当日には「梅雨明けしたと見られる」と仮説として発表し、しばらくしてから確定させるようになった。

記憶によれば、梅雨入り、梅雨明けの時期を事後的に訂正せざるを得ない不順な天候が続いたからだったと思う。確かにリアルタイムで判断するのは難しいから、現実的な方法だ。

ところで、この方法は「仮説」でよいので断定する場合よりも慎重さ、正確さが必要ない。となれば、「早め」に梅雨明けを発表するのと、「遅め」にするのとではどちらがよいだろう?


 ◇  ◇  ◇


気象庁が「経済」効果に配慮して「梅雨明け」発表のタイミングを早めているという証拠はない。しかし、私がビール業界の人間なら、気象庁に「まだですか?」という問い合わせを何度かすることができる。気象庁としては、仮説段階で「遅め」の発表をする理由はほとんど見当たらないだろう。


私たちは、そういう社会で暮らしている。

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2009年7月 3日 (金)

2008年度に破綻した企業の安全性指標

財務分析で、安全性指標と言えば、まず出てくるのが《流動比率》と《固定比率》。

《流動比率》は、短期の支払い能力を表し、100%以上必要で、200%以上が望ましいとされます。

《固定比率》は、より長期的な財務構造の安定性を表し、100%未満が望ましいとされます。

でもその基準、どれぐらい「あて」になるの? ということで、2008年度に破綻した上場企業43社について、簡単な調査・分析を行いました。

◇結論

Photo_2

Photo

◇グラフの説明

棒グラフが《流動比率》で、左寄りの赤い部分が200%以上の企業。中央の濃いピンクが200%未満、100%以上で、右寄りの薄いピンクが100%未満。100%以上でも破綻しているところが多数あるので、100%以上は目印になりません。

青い折れ線は《固定比率》で、100%以下の企業は白抜きの◇で表されています。破綻企業の4割弱が100%以下の条件を満たしており、これも目印にはなりません。

ちなみに、《固定長期適合率》が100%以下、という企業は、《流動比率》が100%以上、という企業とほとんど一致しています。(計算式からも推測がつきます。) どっちにしても安全性の目印としては役立たないわけですが。

◇分析上の注意点

破綻していない企業の安全性指標と比較したわけではありません。 あくまで、「破綻前」の決算書を見て、流動比率や固定比率の基準値を手がかりにすれば、「安全でない」という予測ができたか、という視点です。

また、2008年度に破綻した企業は、不動産と建設の2業種で7割を占めています。不動産の市況が急速に悪化したことが破綻要因になっているので、2008年度のデータには、そうした特徴(偏り)があることにも注意が必要です。


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「株価が上がるとどんなメリットがあるんですか?」

経営者は株価を気にすることが多いけれど、社員は株価上昇のメリットを理解していないことが多いのです。


財務会計の入門レベルの研修をしていて、2回に1回ぐらいは尋ねられる質問がこれ:

「株価が上がるとどんなメリットがあるんですか?」

自分の会社の株価のことです。たいてい昼休みなんかに聞かれます。(^^)

経営者が株価を気にする理由を挙げてみましょう。

1)経営に対する評価を表すから
2)増資による資金調達が有利になるから
3)買収されるリスクが小さくなるから
4)買収するときに有利になるから
5)企業イメージが高まるから
6)個人保有株式の資産価値が高まるから

主なものはこんなところでしょう。

確かに、社員(従業員)にとって切実感のあるものは多くありません。一番気になるのは3)の買収リスクでしょうか?
社員持株会に加入するなどして自社の株を買えば6)の個人資産価値への関心が高まるはずです。


1)〜6)の理由は、財務会計がわからなくても理解できます。もう少し詳しく記しておきましょう。(どうすれば株価が上がるのか? は、別の機会に)

1)経営に対する評価を表すから
・株価には、投資家から見た経営者の評価・期待という側面があります。
株価が上下する理由にはそれ以外の要因も多々ありますが、経営者にとっては、経営がどのように評価されているかを捉える指標にもなります。

2)増資による資金調達が有利になる
・株価が高ければ、新規に発行する株式の価格を高くすることができます。

3)買収されるリスクが小さくなるから
・株価が高ければ、株を買い占める側に多額の資金が必要になり、買収のハードルが高くなります。

4)買収するときに有利になるから
・株式交換による買収で、買収先株式との交換比率を決めるときに、株価が参考にされるので、株価が高ければ有利になります。いわゆる合併でも同じです。

5)企業イメージが高まるから
・株価が高い方がイメージが良くなり、ブランド力や人材募集などの面で有利でしょう。

6)個人保有株式の資産価値が高まるから
・自社の株、またはストックオプション(※)を持っている経営者にとって、個人資産の価値が高まります。社員持株会に加入している従業員にとっても同様です。
※ストックオプション: 一定の価格で株式を購入することができる権利

ちなみに自己株式(※)については、取得後は株価の上下の影響を受けないのでメリットはありません。
※自己株式: 自分の会社が発行した株式で、自社が買い戻したもの。金庫株


(参考になるサイト)
・教えて!goo 「株価が上がると経営者にどんなメリットがある?」
 ◇http://oshiete1.goo.ne.jp/qa3275259.html
・man@bow 「株価が上がると企業にはどんなメリットがあるのですか?」
 ◇http://manabow.com/qa/kabuka_merit.html

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2009年7月 1日 (水)

年の後半が始まりました

7月1日。

2009年もあっという間に半分が過ぎました。

今年1年の目標の中間チェックと後半の追い込み&見直しをして、
残り半分も日々大切にしていきたいと思います。

4月始まりの会社の方は、第2四半期の始まりですね。

うちの会社は6月決算なので今日から新年度です。ただ、会計上のことでしかないので、あまり大きな区切りではありません。

基本はカレンダーイヤー(1−12月)で考えますが、1年単位でものごとを計画するのは長すぎる場合が多いので、四半期単位でローリングするようにしています。

(写真はオフィスにかけてあるカレンダー。上の絵はアザラシです。)

年の後半が始まりました

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