コストダウンの次は回転率アップ
6割経済と言われるほどの急激な景気後退も、やや持ち直したようです。しかし、L字ともW字とも言われるように、今回の景気の見通しは油断できません。
すでに昨年9月のリーマンショックから1年近く経ちます。この間、企業では厳しいコストダウン努力が進められました。
利益=売上−費用 ですから、売上の減少に対して、費用を抑制するコストダウンは、最もわかりやすく、かつ強力な対策です。
では、コストダウンが一巡も二巡もした今、何に取り組めばよいのでしょうか?
私は、「回転率」を高めることをお勧めします。
上場企業は、ROAなどの資本効率を求められるので、すでに多くのところで取り組まれていると思います。しかし、そうでない会社にとっては、意外に盲点ではないでしょうか?
1. 回転率を高めると?
「回転率」は、いわば資産などの活用効率です。
例えば、「在庫回転率」は 売上高 を 在庫金額 で割って求められます。会社が仕入れたり製造したりした在庫が、どれだけ大きな売上に結びついたか、を捉える指標です。
当然、「少ない在庫で、より大きな売上」
に結びつく方がよいのです。裏返せば、在庫回転率からは、「売上が1割減少したなら、在庫の金額も1割減らすべきだ」、と言えるのです。
仕入単価や製造単価を 1%でも下げる、という努力はしているでしょう。ところが、在庫の金額――正確には〔単価×数量〕のうちの数量ですが――を売上高の水準に合わせて減らす、ということを、どれだけの企業が徹底できているでしょうか?
在庫を減らせば 資金 に余裕が生まれます。売れ行きの悪い商品の在庫を減らして、売れている商品や新商品の在庫を増やせば、販売機会が広がり、売上が伸びる可能性が高まります。
また、余った資金を借入金の削減に回せば、わずかでも金利負担を軽くできます。
2.回転率アップの応用
回転率という考え方は、もちろん在庫に限りません。工場や店舗の設備などにも適用します。生み出すものが直接的に売上や販売数量でない場合は「稼働率」と読み替えた方がわかりやすいでしょう。
例えば、オフィスのプリンタに当てはめてみましょう。
1つのオフィス内に、3台以上のプリンタがあるケースを想定しましょう。どれもフル稼働で混み合っているわけでなければ、2台に減らすことで稼働率を高めることができます。(1台にしてしまうのは、故障等のリスクがあるので必ずしもお勧めしません。)
もちろん、これだけでは何もメリットはありません。
しかし、プリンタが複数台ある場合、いくつかの機種が混じっていることが多いですね。機種に応じて、トナーカートリッジも型番が違ったりします。そして、それぞれに補充のためのストックが購入されているのではないでしょうか?
プリンタ台数(機種数)を減らせば、カートリッジの補充ストックの購入量、したがってそのコスト、を減らすことができます。トナー使用量が減るわけではありませんが、オフィスの棚に眠っているトナーの量を減らせるのです。
(プリンタの稼働率をスキップして、単純にトナーの在庫量を減らして回転率を上げる、と考えてもいいでしょう。トナーに限らず、オフィス用品のストック量は、個人の引き出しにあるものも含めれば、かなりのボリュームになるものです。)
3.コストダウンから回転率アップへ
プリンタ&トナーは一例ですが、回転率・稼働率を高めるという発想を、設備・機器、スペース、人員に適用してみるとよいでしょう。
コストダウンは後ろ向きのイメージがありますが、回転率・稼働率アップは、前向きな面もあるのが利点です。在庫などの分母側を小さくするだけでなく、売上や生産物などの分子側を大きくする方向でも考えられるからです。コストダウンの次の段階としてお勧めする理由でもあります。
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