今年は、業績の悪化で自己資本が減少したことなどを背景に、大規模な増資を行った上場企業が多かったですね。
12月17日付の日経新聞によると、4月以降に公募増資をした主な事業会社は以下の通り。有名な会社がずらり。しかも調達額1千億以上が5社も。この8社だけで1兆円を超える。
大規模な増資は株価の下落を招きやすいので、株式市場の低迷の一因になる。別の日の日経の記事に「3D不況」という表現があり、「D」の1つが「Dilution(希薄化)」だった。ちなみに他の2つは「Deflation(デフレ)」
と「DPJ(民主党)」。
------------------------------
■2009年4月以降の主な公募増資
企業名 調達額(億円) 自己資本比率(%) 希薄化率(%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
エルピーダ 633 17.3 38.8
日本郵船 1,080 26.3 34.7
東京建物 287 23.2 32.6
日立製作所 2,507 11.2 32.4
東芝 2,987 8.2 27.7
全日空 1,392 18.3 27.6
NEC 1,155 20.9 26.5
三井化学 407 29.4 26.0
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
・自己資本比率は、増資前の直近期末の値
------------------------------
■出所: 日経新聞 2009/12/17付「激動財務(2)」(一部変更)
この順序は「希薄化率」の高い順。「希薄化率」は、増資で新たに発行される株式数の、すでに発行済みの株式数に対する割合を指す。既存の株主にとっては、新たに株式が発行される分、自分の株式の割合が低下するので、高い希薄化率は歓迎できない。
例)総株式数100株、希薄化率25%の場合、総株式数が125株になるので、元の100株の価値は 100/125=80% になる。つまり20%低下。
それでも企業(経営者)側が大規模な増資をする理由としては,
1)成長のための投資資金が必要、
2)財務の安定性を高めたい、
が、挙げられる。(ほかに提携などで新たな大株主を迎えるケースもある。)
でも、「自己資本比率」が20%を割る(→低い)会社は、2)の理由が大きいとみてよいだろう。
【用語などの解説】
「増資」は新たに株式を発行して「資本金」などを増やすこと(より正確には「資本金など」)。そのぶん「純資産」が増える(もちろん同時に「資産」のキャッシュが増える)。
「純資産」が増えると、ほぼ「純資産」に相当する「自己資本」が増えるので「自己資本比率」が高まる。「自己資本比率」は「自己資本」の「総資本=総資産」に対する割合。値が低いと資本の調達構造が不安定で「安全性」が低いと見られる。上場企業の平均は30〜40%ぐらい。
※ちなみに上のリストは、「公募増資」なので、「増資」額全体とは限らない。(ほかに「第三者割当増資」などがある)
最近のコメント