Re: 「相手の文化を尊重する」
最近、ファシリテーターの一員として加わることがある「グローバルマインド養成研修」では、参加者は自分と異なる文化を持つ人と接するときのスタンスを学びます。それは要するに「相手の文化を尊重する」ということです。相手の文化を知ることが大切ですが、その前に、自分たちの常識で決めつけない姿勢が必要です。
これに関連して、小学校低学年のころに、こんな出来事があったことを思い出しました。
僕のいたクラスにネパールから男の子が転校してきました。日本人ですが、ほとんど向こうで育ったせいで日本での暮らしには慣れていませんでしたし、クラスの僕たちとはちがった感じがありました。
転校してきて日が浅い時期に、彼は何かを尋ねに僕の家にやってきました。わりと近所だったのです。何を聞かれたのか思い出せないのですが、玄関で何かの場所を説明したのを覚えています。暑い季節だったのか、彼はアイスキャンディを食べながらやってきて、そのまま話をしていました。
それを見ていたうちの母が、彼が帰ったあとからですが、
「人にものを尋ねに来るのに、アイスキャンディを食べながらはお行儀が悪いので、注意してあげなさい」
と僕に言いました。
当時は何かを食べながら道を歩くのも良くないとされていましたから、確かに僕も行儀が悪い印象を受けました。
ところが、その話を聞いた父は、
「日本のことを知らないんだからいいではないか。せっかく頼りになると思っておまえのところに聞きに来たのだから、注意することはない」
と制したのです。
もう30年以上前の出来事です。記憶の片隅に残っていたアイスキャンディのシーン、父母とのやりとりが、グローバルマインドの研修をきっかけに違った意味を持って甦りました。
母の考えは、日本では日本のやり方に合わせるべきだというものです。少なくとも当時の僕たちの暮らしていた地域では、ごくふつうの考え方だったと思われます。
他方、父が言っていたのは、自分たちの社会の文化、道徳で決めつけるな。それよりも一人の人間として信頼されたことを大切にしろ、ということだと解釈できます。他人の異なる文化を尊重する考え方です。
ちょっとした出来事の中にも、異なる文化を持つ人に対する接し方が表われるものだし、子どものころのそんな経験の積み重ねが影響を与えていくものかもしれません。
彼は今どうしてるのでしょうか。半年ほどで再びネパールに戻っていったという記憶だけあります。
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