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2017年4月

2017年4月 8日 (土)

関心と責任感の狭域化: 決算期間化(時間軸の短縮)

現代社会では、私的利益の追求の多くは株式会社等を通じた経済活動として行われる。
経済活動は決算期間の一年、またはそれ未満の期間を基本に進められるため、私たちの活動と思考は決算という短い期間に焦点を合わせることになる。関心と責任感の「決算期間化」、時間軸上の短縮である。(※注)

会社の経済活動の成果は、会計上の「利益」として測定、表示される。利益を捉える期間は、決算単位の一年が基本である。
そもそも経済活動の成果はキャッシュフローで捉えるべきだが、一年間で結果(キャッシュのリターン)が得られる事業ばかりではない。株主などへの報告のために、キャッシュフローに代えて、期間中に得られた成果を捉える概念が会計上の「利益」である。

会社の内部では、半期、四半期、さらに月次、週次、日次といった短い単位で業績やその進捗を把握、測定する。
基本単位の一年より短い期間で業績や進捗を捉えるのは、いわゆるPDCAサイクルを短い期間で回して、目標達成のための改善や修正を行うためである。短いサイクルを繰り返した方が心理的に効果的でもある。そして、この傾向は、業種、業務内容、役職などによって異なるものの、現場に近づくほど強くなる。

したがって、会社で働いている多くの人にとっては一年以内の期間目標を追いかけるのが普通になる。まず売上や経費管理の予算がそうであるし、人事評価のサイクルもおおむね半期から一年である。

こうして私たちの活動や思考は、仕事を通じて一年が基本単位となり、あるいはそれを短く刻んだ単位になる。これを「時間軸の決算期間化」と呼んでおこう。

「決算期間化」は、私たちが長い将来にわたって考える機会と経験を減らしてしまう。何事も一年からせいぜい数年程度の目先の期間に結果が出る範囲で結論を出してしまう。それ以上長い時間がかかることには関心が向けられにくく、先送りされることもある。関心と責任感の時間軸上の短縮である。

(※注)いわゆる「ショートターミズム(Short-termism、短期志向)」と同じだと考えてよい。この表現を避けたのは、ここでは主に会社等で働く人たちに焦点を当てたからである。ショートターミズムは、一般に株式市場に関わる投資家や企業経営者の行動傾向を指す。

★2017年5月14日: 一部の表現を修正して更新しました。

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