c オープンな組織、エンパワーされた社員

2009年5月26日 (火)

「『チーム脳』のつくり方」


「質問会議」に続く、日本アクションラーニング協会代表 清宮普美代氏の著書、第2弾。

「成果を上げつづけるリーダーの仕事術」という副題にあるように、チームリーダー、チームマネジャーがどうあるべきかをわかりやすく説いています。

要するに「チーム脳」を作り出すリーダーになるにはどうすればよいか、です。具体的には自分の意見を言う「意見リーダー」と、質問を投げかける「質問リーダー」を対比させたりしながら、新しいリーダー像を描きます。

その背景として(本の中の説明とは少し違いますが)、階層型組織のリーダー/マネジャーモデルでは、現在の知識創造型企業の組織運営がうまくいかないという状況があります。

私自身そういう考えの下、チームメンバーの力を引き出すタイプのマネジャーを育成するための研修プログラムの開発に取り組んでいたので、共感できるところが満載。読んだ直後に清宮さんに会う機会があったので、「あの本、すごい良かったですよ~!」と気持ちを込めて伝えました。


誤解のないように付け加えると、「質問会議」手法については直接触れられていません。手法のエッセンス、あるいは背景にある考え方を、チームリーダーの行動に拡大適用したものと言えます。

したがって、私がぜひ尋ねてみたいのは、「質問会議」を体験したことがない人が読んだらどう受け止めるのか? どこまで伝わるのか?
(著者も「わからない」とおっしゃってました。どなたかいらっしゃったら教えてください。)

この点さえクリアになれば、幅広いリーダー層、マネジャー層にぜひお勧めしたいです。

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「コピー用紙の裏は使うな!」

コスト削減分野の本を探していて見つけた本。タイトルに軽さを感じていたのですが、思いのほかすばらしい!

コスト削減のテクニックに終始せず、現場を巻き込んだ組織マネジメントのあり方まで踏み込んだ奥深い内容です。


コスト削減には「調達改善」「運用改善」「設備改善」の順に取り組みなさい、という基本的な手法から、コスト削減の具体例も挙げてあって、テクニック面でも十分ヒントが得られます。

しかし特筆すべき特徴はもう一つの面、コスト削減に「現場」を巻き込むことで「現場力」を高めることができる、という主張です。具体的には5つの手法(ステップ)を挙げています。

1.「現場」に「経営」やコストを見せる
2.「現場」に徹底して任せる
3.「現場」が自ら効果の検証繰り返せるようにする
4.「現場」におけるコスト削減活動の成果を人事面でも評価する
5.「現場」にコスト削減活動の成果を直接分配する

ちなみに、コスト削減というとマイナスのイメージが付きまといますが、著者は人件費をコスト削減対象に含めません。むしろ、1〜5で現場を巻き込むことで、「現場力」を爆発させることができる、と説きます。

この考え方は、米国で言う「オープンブックマネジメント」と共通しています。まずは身近な「コスト削減」から始めると思えば、「オープンブックマネジメント」の導入のハードルが下がるのではないでしょうか?

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2009年5月10日 (日)

サトーの経営体制

「不屈の理念企業 逆風はね返す身の丈改革」を特集した4月20日号の日経ビジネスにサトーという会社が紹介されています。(※1、2)
その経営体制が、1つの「オープンな組織&エンパワーされた社員」のあり方を示しています。

1)12名の取締役のうち、過半を占める7名(うち5名が社外取締役)は、執行役員会のメンバーでない。(※3) 取締役会議長は輪番制で、取締役に序列がない。

2)執行役員会のメンバーによる経営会議には、現場から推薦された社員が出席する。その内容はイントラネットで公開される。

1)のうち、経営と執行の分離は最近ではよくありますが、議長の輪番制というは聞いたことがありません。

2)は時々見かけます。もっと踏み込んで経営会議の傍聴が自由にできる、というケースもあります。

これだけなら、それほど特殊とは言えないかもしれません。大きなポイントは、記事の中心になっている「三行提報」という制度です。これが「エンパワーされた社員」づくりに役立っています。

「3行127字の範囲で、身の回りで気づいたことや、その改善案を社内システムに打ち込んで提出する。ミソは全社員が1日たりとも欠かさず出さなければならないこと。サボれば昇進の道は断たれる。1日当たりの提出件数は約1900件(海外分も含む)で、あて先はすべて経営トップである。トップは50件前後までふるいに掛けられた中から、目を引いた提案に対してコメントを添えて返信。現場はすぐさま実行に移す。」

当然、些細な内容がほとんどになりますが、全社員が1日1件を課されることで、現場を観察し、疑問を持ち、改善策を練ることになるのです。そうすることで、経営に参加する意識と、考える癖がつくのだと思います。

ちなみに同社はコンサルティング会社を出入り禁止にしているそうです。外部の人に指摘されるような問題は、社員がすでに気づいているからだと言います。

※1: 日経ビジネス 2009/04/20号 p.28−30 特集内「身の丈測り、強さ生む サトー3行の提案が会社を動かす」

※2: 株式会社サトーのサイト http://www.sato.co.jp/
 従業員 連結:3,541名、単体:1,309名
 売上高 連結:877億円、単体:607億円(2007年度)

※3: 記事には「社外取締役が過半を占める」とされていますが、p.29の図によれば、社外取締役は5名、社内取締役が4名のほかに、代表取締役が3名います。会社サイトでもそのようになっています。したがって、上に記したように「執行役員でない取締役が過半を占める」が適切です。

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2009年4月24日 (金)

「ダイアローグ 対話する組織」

企業/組織変革、企業研修に関わる方、とくに「学習する組織」に関心のある方には一読をお勧めします。

読み終えた知人から「朝尾さんにお勧め」と譲っていただきました。企業内人材育成の研究会をされている二人の著書なので、チェックはしていたのですが、決定打に欠けるような気がして買っていませんでした。(^_^;)

お勧めするポイントは、企業内でのダイアローグあるいは対話の役割について、アカデミックな文脈の上に位置づけている点です。

ダイアローグや対話は、形がとらえにくいだけに経験知、成功例として語られることが多いのですが、もうそういう初期段階は終わるべきだと思うのです。

なぜコミュニケーションのあり方から変えなくてはならないのか、をきちんと体系立てて理解し、組織的に変革を進めていくべき時期が来ています。背景になる理論が発展してきていることが、この本を読めばわかります。

大きな組織は論理的な説明がなければ、これまでのやり方を変えることがとても難しい。内部/外部から変革を進めようとする人には、こうした理論武装が必要だと思います。

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2009年3月30日 (月)

イノベーション力 ベスト30社

日経ビジネスは、読まずに積まれていくことが多いのですが、今週号(先週末配本)は「イノベーション力 ベスト30社」を特集していて面白そうです。(※1)

1位 森精機製作所
2位 日本たばこ産業
3位 コマツ

という具合に、やや意外(? 失礼)な社名が上位に並んでいます。興味のある方は、ぜひご一読ください。

「イノベーション」というと「技術革新」と訳されることもありますが、必ずしも「テクノロジー」分野にかぎりません。
選考方法はやや複雑で、2段階方式になっています。

・対象: 全上場企業 約4000社

・一次選抜: 過去8期分の決算データについて、収益性、効率性、成長性、積極性、柔軟性の5項目14種類の指標で配点し、上位約15%(573社)を選抜

・二次調査: 新製品・サービスの投入、業務効率や品質の向上、新しい顧客の開拓、取引先との関係強化、組織運営と多様な人材の活用、という5項目についてのアンケート調査にもとづいて得点化

・総合ランキング: 一次選抜の結果を50点満点、二次調査の結果を100点満点として、総合スコアを算出

ということらしいです。

例えば、一次選抜の「柔軟性」には、「浮動株比率」(高い企業、上昇している企業を高く評価)や「従業員平均年齢」(低い企業、低下している企業を高く評価)などが含まれています。

また、二次選考の「組織運営と多様な人材の活用」には、「教育投資の動向」、「ダイバーシティー(多様性)の推進体制」などが含まれています。

※1:日経ビジネス2009年3月30日号 pp.80-106、ほか

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2009年3月24日 (火)

オープンな組織とは?

弊社の経営理念は「働くことの意義を高める」というものですが、これとは別にキャッチフレーズ的に掲げているのが、「オープンな組織&エンパワーされた社員」です。今日はそのお話を。

「オープンな組織」は「働くことの意義を高める」ためのキーになる条件の一つだと考えています。定義しようとは思っていませんが、
・組織が内部に対して開かれている面と、
外部に対して開かれている面
の両方があると思います。

内部の面では、例えば、業績情報を従業員に開示して参加(意識)を高める
「オープンブック」というマネジメント手法があるのですが、これは一つのオープンな組織の一つのあり方と言えるでしょう。(※1)

実際の「オープンブック・マネジメント」は企業によって様々な形態をとりますが、有名なところでは京セラのアメーバ経営もそれが核になった経営手法だと言えます。(※2)

最近の新聞で見つけたのは、ハマキョウレックスという物流の会社です。(※3)この会社のことは実はよく知りませんが、記事によると、全国57ヵ所の物流センターで「収支日計表」と呼ぶ簡単な損益計算書を作成し、「現場がリアルタイムで日々の損益を把握することで、機動的な費用削減に成功している」のだそうです。パート従業員も収支日計表の情報を共有しているとあります。

こんな風に、会社全体の決算情報を開示するというより、現場に近い組織単位で、しかも日次などの短い期間での開示のほうが意味があります。当事者にすばやい意思決定を促すことができるからです。

オープンブック・マネジメントは、単なるブック(帳簿)の開示ではありません。それにもとづく意思決定とアクションを望むわけですから、受け手である現場の従業員がそれを読んで判断できるようにすること、決定して実行できるようにすることが重要です。つまり教育と権限付与をセットにすることです。

そう、もうお気づきですね。この部分が「エンパワーされた社員」です。エンパワーは、
・知識や技能などを高める教育などをする面と
・決定、実行の権限を付与する面
の両方があると思います。


あなたの会社組織はオープンですか? どんなところがオープンでしょう?

あなたはエンパワーされていますか?(またはエンパワーしていますか?)
 どんなエンパワーをされて(して)いるでしょう?

※1: オープンブック・マネジメントを紹介した本:
・ジョン・ケース「オープンブック・マネジメント」2001年10月(原著1995年)
・ジャック・スタック「グレートゲーム・オブ・ビジネス」2002年6月(原著1992年)
 ※新訳版「その仕事は利益につながっていますか?――経営数字の「見える化」が社員を変える」2009年1月

※2:アメーバ経営についての本:
・稲盛和夫「アメーバ経営」2006年9月

※3:日経新聞、2009/03/04付、投資・財務面「逆風下の健闘企業⑤ ハマキョウレックス 現場で毎日の損益を把握」
・ハマキョウレックスの会社ウェブサイト: http://www.hamakyorex.co.jp/index.html

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2009年3月10日 (火)

「フルコスト主義」

今週の日経ビジネスの特集は「人を切らない経営  雇用騒乱 社員はコストか」。

記事中で紹介される、ダンボール国内最大手レンゴーの大坪社長が実践するのが表題の「フルコスト主義」です。(※1)

「資本」「税」「社会」「労働」への再分配をすべて費用として価格を決める考え方
だそうです。

ふつうのコストの考え方とどこが違うのでしょう?

「これまでの製造業は限界利益を追うことばかりを考えてきた」ために、固定費である人件費を削減し、さらに変動費化した非正規社員の人件費削減にまで踏み込んでいるのが現状だといいます。

一方、フルコスト主義は「労働への再分配」も製品価格の決定要素になり、「取引先にフルコスト主義が認められなければ、ウチは仕事を休ませてもらう、という強い意志が必要」だと説きます。その姿勢で値上げ交渉に挑んで実現したことがあるのだそうです。

ちょっと違いがわかりにくいかもしれません。要するに原材料や設備などの費用はメーカーとしてコストダウン努力の対象にするけれど、本来必要な人件費(労働への再分配)はコストダウン努力の対象にしない。それよりも、こうしたコストを確保できる価格水準を実現する努力をせよ、ということだと解釈できます。


ちなみに、日経ビジネスはここ2,3年、わりとはっきりと従業員を大切にする論調が感じられます。経営者層が中心読者というイメージがありますが、おもねることなく、警鐘や新しい経営のあり方をメッセージとして発信するという姿勢でしょうか。

※1:日経ビジネス 2009年3月9日号 pp.28-30 「派遣を正社員化する真意  レンゴー・大坪社長、均等待遇への通過点」より

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2008年2月25日 (月)

全員参加型経営 アルバック

日経ビジネスの最新号(2008/02/25号,pp.26-28)に紹介されているアルバック社は、1990年代後半に全員参加型経営に舵を切って、急成長したという。

続きを読む "全員参加型経営 アルバック"

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2007年5月31日 (木)

「人を基軸にした経営」 ダイキン工業

少し前からダイキン工業の経営に注目して、調べたりしている。
「人を基軸にした経営」、「フラット&スピードの経営」を標榜し、
うまくいっているようなのだ。

社内の実態(実感)は、雑誌などの記事だけではわからないものの、
1兆円クラスの製造業で、これほどエンパワーメントと人材育成が
うまく噛み合っている会社は、珍しいのではないか。

下記は、コンパクトに特徴がまとめられた記事。

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2007年5月28日 (月)

社員・アルバイトに任せて、考えさせる会社 くふ楽

くふ楽
 社長: 福原裕一 氏 
 本社: 千葉市
 従業員数: 正社員35人、アルバイト・パート約160人('06年9月)
 事業内容: 外食事業(居酒屋チェーン)、ほか

雑誌「日経情報ストラテジー」(2007年4月号 pp.60-63)で紹介されていた会社。
以下、記事より抜粋、一部要約。

「飲食業では、内装などはいくらでもまねできる。自分自身で考えて行動できる仕組みを作るのが私の仕事」(福原社長)

■主な特徴(エンパワーメントと人材育成の面)

・新業態店が会社の経営理念に合致しているかどうかを店長に議論させる

・人材育成に注力し、アルバイトの「卒業式」など、年4回全店を休みにしてイベントを開く

・スーパーバイザー(SV)はいない(廃止した)

・細かいマニュアルはなく、店長はメニューや販促など幅広い権限を持つ

・「メンバー」と呼ぶアルバイトの意見を店舗運営にどんどん反映する

・アルバイトが主体になる改善提案活動のしくみがあり、その成果は毎月の各店の代表が集まる会議で共有される

■主な特徴(イントラネットを用いた数値管理)

・営業・財務情報をイントラネットでオープンにしている。

・イントラネットには、店別の売上高や営業利益の「日次決算」が、ランキング形式で掲載される

・SV制度がない代わりにイントラネット上で、3~4店のグループごとに業績が相互評価される

・店長がグループ内の別の店に行って、味や雰囲気などを評価する制度があり、その評価もイントラネットに掲載される

・手渡しの顧客満足度アンケートを行っており、QSCの分野ごとに点数化したランキングがイントラネットに掲載される

■朝尾の一言

すばらしい! まさに「エンパワード・カンパニー」。
もっとも、記事はいいところだけを取り上げる面もあるので、ぜひ一度店に行ってみたいし、社外のゲストが参加できるという店長会議にも参加してみたい。

記事の最後には「権限委譲と数値管理の両輪」と書いてあったが、ウェブサイトも合わせて見ると、経営理念や行動指針がお題目にならないよう、活かす工夫をしていることがわかる。やはり、この3つがセットなのだろう。

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