デモクラシー関連の本

2006年5月11日 (木)

「奇跡の経営」 &d

従業員数3000人、売上高2億ドル超の「民主制」の企業組織があると言われて、信じられるだろうか? 
「奇跡の経営」は、ブラジルにあるそんな会社「セムコ」社のCEO・リカルド・セムラーが著した本だ(*1)。

先週、10年以上ぶりに会った昔の会社の同期(今は税理士)に、企業組織の民主制の話をしたところ、この本のことを教えてくれた。実はまだ読み始めたところで、どんな会社なのかよくわからないが、わくわくしている。

そう、現実に「民主制」の会社は実現可能で、しかもきちんと収益を上げることも可能なのだ。もちろん、私はすべての会社が同じ意味で「民主制」になればよいとは思っていない。多様な「民主制」があるだろうし、程度の違いもあるだろう。その中で、きっとセムコ社は一つのモデルになるはずだ。

読み終えたら内容を紹介しよう。

*1: 「奇跡の経営  一週間毎日が週末発想のススメ」 リカルド・セムラー〔著〕、岩元 貴久〔訳〕、2006/01、総合法令出版、ISBN: 489346941X
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"&d"="and democracy": デモクラシーを切り口に様々なトピックを捉えるシリーズ。

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2006年5月 4日 (木)

梅田望夫「ウェブ進化論」 &d

梅田望夫氏による「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる」(*1)を読んだ。21世紀のデモクラシー(民主主義)が、20世紀までのそれとまったく異なる様相のものになることを、確信をもって予感させられた。

これまでのインターネットなどの情報技術とデモクラシーの関係は、「eデモクラシー」や「ネット選挙」のように、既存の民主主義制度を発展・充実させるという域を出てなかったように思う。

しかし、たとえば本書が紹介するグーグルの民主主義は、まったくそういうものではない。

グーグルは自らのミッションを「世界中の情報を組織化(オーガナイズ)し、それをあまねく誰からでもアクセスできるようにすること」と定義している。(p.50)

そしてグーグルに勤める友人の話として、次の言葉を紹介する。

「世界政府ってものが仮にあるとして、そこで開発しなければならないはずのシステムは全部グーグルで作ろう。それがグーグル開発陣のミッションなんだよね」(pp.14-15)

また、グーグルのウェブサイトにある「10 things Google has found
to be true」(グーグルが真実だと見出した10の事柄)の一つに、「Democracy
on the web works.」(ウェブ上の民主主義はワークする)という項があるといい(p.53)、具体的には検索エンジンのランク付けを例に、次のように説明している。 

権威ある学者の言説を重視すべきだとか、一流の新聞社や出版社のお墨付きがついた解説の価値が高いとか、そういったこれまでの常識をグーグルはすべて消し去り、「世界中に散在し日に日に増殖する無数のウェブサイトが、ある知についてどう評価するか」というたった一つの基準で、グーグルはすべての知を再編成しようとする。(中略)リンクという民意だけに依存して知を再編成するから「民主主義」。そしてこの「民主主義」も「インターネットの意志」の一つだと、彼らは信奉しているのだ。(pp. 54-55)

おそらく、これだけではピンとこないかもしれないが、興味のある方は本書を読んでいただたい。ほかにも、デモクラシーの中身が変わるであろうことを予感させる話がいくつもある。

もちろん、デモクラシーだけでなく、ネットがこれからの社会にどういうインパクトをもたらすかについて関心のある方にも、ぜひぜひお勧めしたい。

*1: 「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる」(2006/02、筑摩新書) 
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"&d" = "and democracy". デモクラシーを切り口に様々なトピックを捉えるシリーズ。

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2005年6月18日 (土)

書評: 「巨大企業が民主主義を滅ぼす」

原題は"Silent Takeover"(無言の乗っ取り)。タイトルだけでなく、静かに進行する社会の変化に対する警鐘の書という意味でも、カーソンの「沈黙の春」(Silent Spring)を思い起こさせる。
「巨大企業が民主主義を滅ぼす」 書誌データ(このブログ内)。
※「沈黙の春」文庫版新装版(四六版変型) いずれも新潮社のサイト。

今では古典となったカーソンの著書は、農薬や殺虫剤などに持ちいらる化学薬品が、生態系の破壊をもたらすことを世の中に訴える先駆けとなった。一方、ハーツによる本書は、巨大な多国籍企業が、民主主義国家の政府に取って代わる存在になりつつある現実を、豊富な事例で描いている。

■企業が国家にとって代わる

「世界の国家と企業の経済規模の上位一〇〇社をみると、企業は五一社入っており、国家は四九ヵ国にすぎない。」(p.14, 企業の売上高とGDPを比較)というのだから、「乗っ取り」でなくても、経済的な権力の面で企業が国家に取って代わるほど大きな存在になっていることがわかる。

その「乗っ取り」について描く前半部では、巨大企業(の一部)が金の力で、政府や国際機関の政策に影響を与えている様子に、暗澹たる気分にならざるを得ない。

■企業による統治

一方後半部は、消費者が購買行動を通じて企業に影響力を行使したり、インターネットや直接抗議行動を通じて企業や政府の政策に影響を及ぼしたり、という事例が挙げられ、光明を感じることができる。

また、ジョージ・ソロス氏やテッド・ターナー氏のような成功した実業家が、莫大な金額を慈善活動や国連に寄付するなどのかたちで、従来の政府の役割を補っている面にも目が向けられている。

さらに、突き詰めれば利益追求のためのマーケティング手法であっても、CSR(企業の社会的責任)が重視されることで、企業活動が倫理的になる面も指摘されている。

■人々のための民主主義の再建

こうした企業による統治に対抗するルート、実業家や企業活動自体に期待できる部分を挙げながらも、著者はまったく楽観はせず、最後に「人々のための民主主義を再建」する方針を打ち出している。

具体的には、あまり詳しい記述はないものの、次の6つの方策が提起される。
1)国家のレベルで、企業の特権を剥奪する、
2)トリクルダウン理論へのこだわりを捨てる(レーガノミクス、サッチャリズムの否定)、
3)国家レベルでの企業の力を抑止する(独禁法強化など)、
4)グローバルなレベルでの政治を組みなおす(海外の子会社の事業活動に対する責任を親会社に義務づける、世界社会機関のような機関を設立するなど)、
5)最も排除され周縁においやられている人たちの問題を解決する
6)グローバルな税金管理機関を設立する

■企業による統治に対する民主主義

しかし私の見方は少し違う。著者の挙げる方針は確かにもっともなもので、「人々のための民主主義を再建」すること自体には、もちろん全面的に賛成する。

しかし、新たな権力者である企業に対して、政府や国際機関が規制をかけ、問題解決を図る、という方法で、果たして十分なのだろうか。従来の民主主義制度による政府の統制が、それほどうまくいっていないことを考えると、このやり方は楽観的すぎる。

むしろ、新たな権力者である企業を民主的に統制する方法を、もっと幅広く検討すべきだと思う。市場主義経済では企業は利益追求を第一にする、という前提で本書は書かれているが、必ずしもそういう見方がすべてではない。

現状では制度面でも未発達の部分が多いが、企業自体の統治(ガバナンス)を、より民主的なものに近づけることが可能なはずだ。それによって企業による社会の統治を、より民主的なものにすることができるのではないか。その方が楽観的すぎるとの批判は覚悟しているが、本書に対するコメントの域を出るので、別の機会に改めて考えを述べたい。■

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2005年5月14日 (土)

■本の結び目について

●本企画は中止します●2005/09/04 ※コメント参照ください。

ブログやHP上で本についての記事を書くとき、書名のリンク先がアマゾンのサイトって少しおかしいと思いませんか?
アマゾンが悪いわけではありませんが、本についての情報の集約点がないことが原因だと思います。出版社のサイトは目次すら載ってないことがあるし、すでに読んだ人のコメントや評価も知りたいものです。

そこで実験的に、このブログに本の基本情報を掲載して、コメントや書評などの情報を集める「結び目」を作りたいと思います。記事タイトルに『』が付いているものが、本の基本情報です。とはいえ、本は莫大な数が出ているので、分野を絞ってデモクラシー関連本から始めてみます。

●ご協力のお願い

1.書評・感想などをお寄せください。
コメント欄でも、ご自分のプログへのトラックバックでも歓迎です。
2.書評などのURLをお寄せください。
本についてのコメントや書評が掲載されているサイトで、ご存知のものがあればURLなどをコメント欄に書き込んでください。私自身も検索して見つけたものを書き込みます。
3.追加したいタイトルをお寄せください。
この記事のコメント欄にご記入ください。

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『粉飾国家』

『粉飾国家』
金子 勝, 2004/07.
[講談社, ISBN4-06-149721-9, \700+税, 196pp, 新書]

出版社サイト(紹介・目次あり)][アマゾン
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『デモクラシーとは何か』

『デモクラシーとは何か』
ロバート・ダール, 中村孝文, 2001/05.
[岩波書店, ISBN4-00-002718-2, \2800+税, 306pp, 四六判・並製]
(On Democracy; Robert Alan Dahl; 1998)

出版社] [アマゾン
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『巨大企業が民主主義を滅ぼす』

『巨大企業が民主主義を滅ぼす』
ノリーナ・ハーツ, 鈴木淑美[訳], 2003/8.
[早川書房, ISBN4-15-208498-7, \2000+税, 309pp, ハードカバー]
(The Silent Takeover:  Global Capitalism and the Death of Democracy; Noreena Hertz; 2001)

出版社のサイト(紹介あり)][アマゾン
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『民主主義の文法――市民社会組織のためのロバート議事規則入門』

『民主主義の文法――市民社会組織のためのロバート議事規則入門』
ドリス・P.ジマーマン, 立木茂雄[監訳], 2002/11.
[萌書房, ISBN4-86065-004-2, \1600+税, 128pp, ソフトカバー]
(Robert's Rules In Plain English; Doris P. Zimmerman; 1997)

出版社のサイト(紹介あり)][アマゾン
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『デモクラシーの論じ方』

『デモクラシーの論じ方』
杉田敦, 2001/5.
[筑摩書房, ISBN4-480-05894-X, \680+税, 190pp, 新書]

[出版社のサイト][アマゾン
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『デモクラシーの冒険』

『デモクラシーの冒険』
姜尚中、テッサ・モーリス-スズキ,
2004/11.
[集英社, ISBN4-08-720266-6, \720+税, 270pp, 新書]

出版社サイト(紹介あり)][アマゾン
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