j 本の紹介・お勧め本

2010年3月 2日 (火)

「フリー 〈無料〉からお金を生み出す新戦略」

昨年後半、最近流行りの「無料」を核にしたビジネスモデルについて、いい本が見当たらないので、もう少し整理しておきたいなぁと思っていたら、出会いました。ちゃんと世の中には、そういうことをきちんと調べてまとめる人がいるものです。(もちろん、自分でやるより、断然レベルが高い)

「フリー 〈無料〉からお金を生み出す新戦略」

がそれ。
「ロングテール」を流行らせたクリス・アンダーソンという人が著者。

時間がない人は、第2章(p.48)までだけでも読まれることをお勧めします。


ここで著者は、フリーのビジネスモデルを、4つに分類している。
今後、これが基本フレームワークになるだろう。
(個人的には、これが欲しかった・・・)

フリー① 直接的内部相互補助
フリー② 三者間市場
フリー③ フリーミアム
フリー④ 非貨幣市場


厚い本なので、中盤はかったるくなって、多少飛ばし読みをしていたのだけれど、後半にかけてとても刺激的になった。頭の中がどんどん動き始めた。

良い本というのは、ぐいぐいその本の中に引き込まれるものもあるけれど、これは別のタイプ。
読んでいる途中で目が止まって、連想される別のことを考え始める。そういうことが何度も起こる本。久々に、何度もそういう体験をした。

これは、知識を得るだけの本ではなく、知っていることをわかりやすく整理してくれるだけの本でもなく、世界の理解のしかたの組み換えを求める本だと思う。
私自身は、まだ組み替えが十分にできていない――本を読んだだけで完全な組み換えはできないと思う――けれど、そのきっかけは確実にもらった。

1ヶ所だけ引用をしておきます。(孫引き)

SF作家のコリィ・ドクトロウによる「タンポポの考え方」を引用した部分。

 タンポポの視点から見れば、個々の――というよりほとんどの――種子の損失は重要ではない。重要なのは、春が来るたびにすべての舗装道路のすべての裂け目がタンポポで埋まることだ。タンポポはただひとつの貴重な自分のコピーを世話して、それがやがて自分のもとを離れ、注意深く道を選んで生育に最適な環境へと到達し、そこで家系を永続させることを望んだりしない。タンポポが望むのは、あらゆる繁殖の機会を利用することなのだ。
フリーのビジネスモデルは、「潤沢さ」を利用して、タンポポの戦略を採用することなのだという。 引用箇所の3つ目の文章(ただひとつの貴重な・・・)が、ヒトの戦略を指しているのは明らかで、私たちはそのギャップに悩まされることになる。

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2009年7月22日 (水)

「対話流」

日本アクションラーニング協会の代表、清宮さんの新著。

フィンランドの教育に詳しいという北川達夫氏との共著だそうです。最近、清宮さんは著書を連発されています。

私も今日手に入れたばかりで、まだ読んでいません。

ちなみに清宮さんによれば、タイトルの「流」は流派、スタイルの意味ではなく、対話の「流れ」を表しているのだとか。


帯に

「闘うコミュニケーション」はもう古い。

というコピー。

確かに世紀の変わるころから、望ましいコミュニケーションのあり方、というものが大きく変わりつつあるのを感じます。


研修でも、「討議」や「ディスカッション」という表現が減っていくものと思われます。

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2009年5月26日 (火)

「『チーム脳』のつくり方」


「質問会議」に続く、日本アクションラーニング協会代表 清宮普美代氏の著書、第2弾。

「成果を上げつづけるリーダーの仕事術」という副題にあるように、チームリーダー、チームマネジャーがどうあるべきかをわかりやすく説いています。

要するに「チーム脳」を作り出すリーダーになるにはどうすればよいか、です。具体的には自分の意見を言う「意見リーダー」と、質問を投げかける「質問リーダー」を対比させたりしながら、新しいリーダー像を描きます。

その背景として(本の中の説明とは少し違いますが)、階層型組織のリーダー/マネジャーモデルでは、現在の知識創造型企業の組織運営がうまくいかないという状況があります。

私自身そういう考えの下、チームメンバーの力を引き出すタイプのマネジャーを育成するための研修プログラムの開発に取り組んでいたので、共感できるところが満載。読んだ直後に清宮さんに会う機会があったので、「あの本、すごい良かったですよ~!」と気持ちを込めて伝えました。


誤解のないように付け加えると、「質問会議」手法については直接触れられていません。手法のエッセンス、あるいは背景にある考え方を、チームリーダーの行動に拡大適用したものと言えます。

したがって、私がぜひ尋ねてみたいのは、「質問会議」を体験したことがない人が読んだらどう受け止めるのか? どこまで伝わるのか?
(著者も「わからない」とおっしゃってました。どなたかいらっしゃったら教えてください。)

この点さえクリアになれば、幅広いリーダー層、マネジャー層にぜひお勧めしたいです。

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「コピー用紙の裏は使うな!」

コスト削減分野の本を探していて見つけた本。タイトルに軽さを感じていたのですが、思いのほかすばらしい!

コスト削減のテクニックに終始せず、現場を巻き込んだ組織マネジメントのあり方まで踏み込んだ奥深い内容です。


コスト削減には「調達改善」「運用改善」「設備改善」の順に取り組みなさい、という基本的な手法から、コスト削減の具体例も挙げてあって、テクニック面でも十分ヒントが得られます。

しかし特筆すべき特徴はもう一つの面、コスト削減に「現場」を巻き込むことで「現場力」を高めることができる、という主張です。具体的には5つの手法(ステップ)を挙げています。

1.「現場」に「経営」やコストを見せる
2.「現場」に徹底して任せる
3.「現場」が自ら効果の検証繰り返せるようにする
4.「現場」におけるコスト削減活動の成果を人事面でも評価する
5.「現場」にコスト削減活動の成果を直接分配する

ちなみに、コスト削減というとマイナスのイメージが付きまといますが、著者は人件費をコスト削減対象に含めません。むしろ、1〜5で現場を巻き込むことで、「現場力」を爆発させることができる、と説きます。

この考え方は、米国で言う「オープンブックマネジメント」と共通しています。まずは身近な「コスト削減」から始めると思えば、「オープンブックマネジメント」の導入のハードルが下がるのではないでしょうか?

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2009年5月 5日 (火)

「日本でいちばん大切にしたい会社」

もう読まれた方も多いのではないでしょうか?
話題の本。初めて書名を知ったのはほぼ1年前。最近になってメディアで目にすることが増え、ちょっとしたきっかけで買いました。(※1)

涙が出ます。

ポロポロではありませんが、電車の中で何度かうるうるしてしまいました。
「泣ける」とは言いたくありません。経営に携わる者として、それでは済まされないように感じます。

著者が「日本でいちばん大切にしたい会社」を主に5社紹介しているのですが、そのあり方、成功のしかたが、いわゆるオーソドックスなビジネスのセオリー、ロジックと違っているのです。カタカナを羅列しましたが、私たちが教科書的に教わることの多い、欧米発の経営理論、経営思想と呼ぶべきかもしれません。

紹介されている会社に共通しているのは「人」を大切にしている点でしょう。

自戒を込めて言うなら、これまで主流のビジネス、企業経営の考え方は、カネやモノの視点に偏っており、ヒト、とりわけその気持ちや幸福感、さらに社会についての視点が弱かったと認めなくてはなりません。

それほどオルタナティブ(代替的)なモデルを提示しているように思えます。

この本を読んでそこまで大きな話に広げるか?と思う人もいるかもしれません。感じ方は読む人次第。ぜひご一読を。

※1: 坂本光司、日本でいちばん大切にしたい会社、2008/04、あさ出版
ちなみに、昨年の4/1に第1刷、私が買ったのは2009/04/13の第37刷、つまり1年間、月平均3回ぐらいの増刷!

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2009年3月30日 (月)

イノベーション力 ベスト30社

日経ビジネスは、読まずに積まれていくことが多いのですが、今週号(先週末配本)は「イノベーション力 ベスト30社」を特集していて面白そうです。(※1)

1位 森精機製作所
2位 日本たばこ産業
3位 コマツ

という具合に、やや意外(? 失礼)な社名が上位に並んでいます。興味のある方は、ぜひご一読ください。

「イノベーション」というと「技術革新」と訳されることもありますが、必ずしも「テクノロジー」分野にかぎりません。
選考方法はやや複雑で、2段階方式になっています。

・対象: 全上場企業 約4000社

・一次選抜: 過去8期分の決算データについて、収益性、効率性、成長性、積極性、柔軟性の5項目14種類の指標で配点し、上位約15%(573社)を選抜

・二次調査: 新製品・サービスの投入、業務効率や品質の向上、新しい顧客の開拓、取引先との関係強化、組織運営と多様な人材の活用、という5項目についてのアンケート調査にもとづいて得点化

・総合ランキング: 一次選抜の結果を50点満点、二次調査の結果を100点満点として、総合スコアを算出

ということらしいです。

例えば、一次選抜の「柔軟性」には、「浮動株比率」(高い企業、上昇している企業を高く評価)や「従業員平均年齢」(低い企業、低下している企業を高く評価)などが含まれています。

また、二次選考の「組織運営と多様な人材の活用」には、「教育投資の動向」、「ダイバーシティー(多様性)の推進体制」などが含まれています。

※1:日経ビジネス2009年3月30日号 pp.80-106、ほか

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2009年3月18日 (水)

「マネジメント2.0」

今月発売のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューに、「コア・コンピタンス経営」「経営の未来」などの著書で有名な、ゲイリー・ハメル氏の「マネジメント2.0」という論文が掲載されています。(※1)

20世紀に発展した「マネジメント(1.0)」のパラダイムをシフトさせるのが「マネジメント2.0」。そのための課題を25つ挙げています。(※2)

私たちの世代は、20世紀に一応の完成を見た「マネジメント」を革新して、新しい「マネジメント」を創造していく責任があると思うのですが、大いにその参考になります。


25の課題の1番目は「経営層がより次元の高い目的を果たす」というもの。

特に重要とされる最初の10項目の中には、ほかに
4.「階層制の欠点を取り除く」
6.「管理手段を刷新する」(自律的なコントロールを促す)
7.「リーダーシップを問い直す」
10.「組織を小単位に分ける」
などがあります。

弊社のテーマ「オープンな組織とエンパワーされた社員」に関連するものでは、
12.参加型の手法を用いて組織の方向性を決める
15.情報をできるだけ広く共有する
17.社員の裁量の幅を広げる
23.社内外の力を動員できるよう、新たなマネジメント手法を考案する
などがあります。

短い見出しだけでは何を言わんとするのかわかりにくいので、ぜひ論文(記事)をお読みください。

※1:ゲイリー・ハメル、「新時代へ向けた25の課題 マネジメント2.0」、
pp.58-72,DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2009年4月号

※2:シリコンバレーの非営利研究機関「マネジメント・ラボ」が開催したカンファレンスで選ばれたもの。

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2009年2月27日 (金)

「さあ、才能に目覚めよう」

表題は、帯に大きく「勝間和代氏推薦!」と書かれた本のタイトル(※)。
まだ全部読みきっていませんが、さっそく測定検査を受けて、自分の5つの優位な資質を知りました。

これが、なかなか見事に当たっていて、笑えるほどでした。

いろいろ考えさせられますねぇ。

この本では、才能(≒資質)を「無意識に繰り返される思考、感情、行動のパターン」と捉え、それを伸ばして「強み」にすることを勧めています。

結果が当てはまっていることよりも、この「パターン」が、脳細胞の接合部(シナプス)の結合パターン、いわば脳内回路の構造によって生み出されている、という点に説得力を感じます。「性格」のように、経験や価値観なども入り混じっているものとは違うのです。

で、どんな資質があるかについては、著者たちのギャラップ社が独自に開発した「ストレングス・ファインダー」という測定検査で、簡単に知ることができます。

同社は膨大な人数の調査を経て34の資質を抽出しており、検査を受けると、その人の中で優位を占める5つの資質を結果として返してくれます。ちなみに、5つの組み合わせが一致する確率は3300万分の1なのだそうです。日本全国で4人ぐらい。

さて、私の5つの資質とは・・・?

1.学習欲
2.回復志向
3.分析思考
4.慎重さ
5.収集心

検査は、本を買えばネットで受けられます(日本語OK)。
あなたもぜひ!受けてみてください。よかったら結果も教えてください。
これ、仕事仲間や家族・友人の間で、お互い共有すると効果的だと思うんですよね。
(さっそく妻にも買わせました)

※「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう ――あなたの5つの強みを見出し、活かす」 マーカス・バッキンガム&ドナルド・O・クリフトン
著、田口俊樹 訳、日本経済新聞社、2001/11月、1600円

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2008年10月11日 (土)

「論理的に『話す』技術」

仕事の場でわかりやすく話ができるようになりたい人に、ぜひお勧め。

実は、著者である大嶋友秀さんから「ベストセラーになってはいないが、いい本ですよ」とお勧めいただいた本なのだが、知人の著書だからと言ってお勧めしているわけではない。

「わかりやすく話す」ということについて、きわめて具体的に、実用に即した形で解説されている。とくに価値が高いのは、論理的であること」と「わかりやすい話」のギャップを埋めている点。PREP法という論理的な構成法を基本にしながら、むしろ「わかりやすい話」に焦点を合わせている。

ビジネスの場での「わかりやすい話」はふつう「論理的な話」と言い換えられる。しかし、これが曲者で、ロジカルシンキングのMECEやピラミッドプリンシプルを適用したからといって「わかりやすい話」になるわけではない。そういう疑問や不満を感じたことがないですか?

現実のビジネスの場、とくに「話し言葉」の場合には、厳密な論理性よりも、的確さや単純さ、納得感の方が重要ではないか? 私たちは、頭にすぅーっと入ってきて、記憶に残りやすい話のことを「わかりやすい話」と呼んでいるように思う。

「わかりやすい話」にするためには、文を短くする、要点を絞る、要点を繰り返す、数字を使う、比喩などを用いて想像力に訴える、など、論理的であること以外の要素が必要である。

こうした細かいコツや視点、つまり「論理的」な構成を基本としつつ「わかりやすい話」にするための技術が、事例を挙げて解説されている。

私もこの本から学んで、もっとわかりやすく話せるようになるつもり。同じような思いを持つ方にお勧めします。

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2008年9月13日 (土)

アクションラーニングの入門書が発売されます

昨年秋にアクションラーニングのコーチ認定を受けて、仕事でも活用
しているが、体験したことのない人に理解してもらうのが難しいのが
欠点だった。

その点は、コーチ養成などをおこなっている日本アクションラーニング
協会の人も同じように考えていたのだろう。この技法を用いた話し合い
のセッションを、思いっきりわかりやすく「質問会議」と言い換えた
入門書を出すに至ったそうだ。

まだ発売前なので、中身を読まずにお勧めするのは恐縮だが、
著者いわく「苦節3年」の力作らしいので、期待してよいと思う。

下記は、同協会が行う発売キャンペーンの情報。

★PHPより9/20発売★

【組織内のチーム育成を真剣に考えたいリーダーの必読書】
『 チーム脳にスイッチを入れる!「質問会議」
~なぜ質問だけの会議で生産性が上がるのか?~』

今月20日(土)、トヨタ自動車、富士ゼロックス、NECなど
国内有数企業への導入実績を有する著者が放つ、初の質問会議
ノウハウ本がPHP研究所より発売となります。

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東京・大阪)ご招待
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〔参考〕アクションラーニングについての過去の記事


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